郊外・庭付きの実家が「迷惑資産」になるワケ 1億円超で買ったが今や2000万円台に

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庄戸の住宅地。坂が多く、商業施設もない。お年寄りには暮らしづらい場所だ

3年ほど前まで、庄戸の中古住宅はそれでも1区画あたり3000万円台半ばで取引されていだ。急落のきっかけは地元中学校に統廃合の話が持ち上がったことだ。相場は一気に1000万円近く下落したという。

庄戸地区内にある庄戸中学校は2015年4月、隣の地区の上郷中学校と統合する。統合後には上郷中学校の施設が使われ、庄戸中学校は廃校となる。庄戸地区から上郷中学校までは、徒歩30分弱の距離がある。

今後、積極的に庄戸で新居を構える子育て世帯は少なそうだ。たまに、「子どもが大きくなって二人暮らしになったのでのんびりと庭いじりをしたい」というリタイア後の夫婦が、庄戸地区の物件を購入することはあるかもしれない。だが、アクセス至便な駅近物件が人気のご時世、こうしたニーズは決して多くない。

一方、中学校の統廃合が決定したここ1年ほどで、売り物件は一気に増加。多くの人は、居住しながら売りに出している。中には、売却資金が手に入らないため、住み替えられずにいる世帯もあるという。売り手の希望で3000万円台、4000万円台という強気の値段設定をしている物件もチラホラあるが、もちろん1年以上買い手はついていない。

「郊外・庭付き」は「売れない」の代名詞 

こうしたケースは、庄戸に限らない。

郊外で、特に駅からバスで15分以上かかるような住宅を売るのは圧倒的に不利だ。自慢だった庭付きの広い家も、最近では「2~3人で住むには広すぎる」「庭の手入れが大変」と敬遠される傾向にある。

週刊東洋経済2014年12月20日号(12月15日発売)の特集は「実家の片づけ2」です。8月に発売し大反響を呼んだシリーズの第2弾。整理整頓から売却、墓じまいまで総まくりしました。

総務省の住宅・土地統計調査(2013年)によれば、全国の空き家数は820万戸と、5年前に比べ63万戸(8.3%)増加。総住宅数に占める空き家率は13.5%に達している。日本は7軒に1軒が空き家だが、さらに激増する見込みだ。

というのも、現在60代後半の団塊世代の多くが買い求めた郊外・庭付きの一戸建ては、売りに出しても売れ残り、世帯主が亡くなったり高齢者施設に入居したりすると空き家になる例が多いだろう。つまり、郊外のベッドタウンから、大量の空き家が発生してくることになる。

この問題は、現在30~40代を中心とする子ども世代にのしかかってくる。親が亡くなれば、空き家となった郊外の実家を相続する。通勤に不便な実家に引っ越すつもりがないなら、売るなり貸すなりを考えることになるだろう。

親から受け継ぐような築古物件(主に築20年以上)の場合、建物の価値はほぼゼロで、中古価格は土地代のみ。価格を低く設定しても、需要が少なければ取引はなかなか成立しない。こうなると、不要な実家のために、毎年、安くない固定資産税を払い続けるはめになる。

不動産はこれまで、非常に価値の高い資産とされてきた。だがそれは、今や都心の一等地、それもごく一部に限った話。それ以外の不動産の資産価値は今後も下がり続ける。あなたの実家は、こうした”負”動産のリスクを抱えていないだろうか。

前野 裕香 ライター

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まえの ゆか / Yuka Maeno

1984年生まれ。2008年に東洋経済新報社に入社し記者・編集者として活動した。2017年にスタートアップ企業に移り、広報やコンテンツ制作に従事。現在はフリーランスライターとしても活動中。

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