それへの危機感から、安倍政権の政府は数値目標を掲げて、これまで以上の前向きな姿勢を示し始めました。経済界に対し「指導的地位に女性が占める割合が2020年で30%」を要請。こうした女性の活躍推進の取り組みは、成長戦略の基本的な考え方に位置づけられ、進みつつありますが、とはいえそれは成果につながるのでしょうか。
ひとりだけ登用するのは簡単だが……
女性管理職をひとりだけ抜擢するのは簡単です。本社の広報・宣伝など女性らしさが生かせる部署で登用すればいい。いわゆるIR、PR、HR、CSRといった「R」のつく仕事です。ところが、社内で管理職を2~3割まで増やすとなると、実現にはそうとうな壁があります。そもそも、会社サイドが
「昇進意欲が低いので、管理職に登用しにくい」
など、女性管理職の登用にネガティブな意見の場合が多いのも実情です。
NTTデータ経営研究所の調査によれば、女性社員の約6割が「マネジメントをする立場ではなく、気楽な立場で仕事がしたい」と回答。約3割が「自分の知識や技術が生かせるスペシャリストとして力を発揮したい」と答えています。管理職になりたい女性社員はごくごくまれ。
当方が取材した会社でも、こうしたデータに近い志向が見られました。管理職になどなりたくないと言っているのに、世の中の流れで作為的に管理職を作り出すのはいかがなものか、と考えている会社も少なくありません。おまけに“過去のトラウマ”も多くの会社に残っているのです。
男女雇用機会均等法が施行されてから約30年。時流に乗るべきと女性管理職を登用して痛い目に遭った会社は少なくありません。取材した中堅広告代理店のD社は、10年前に女性社員から管理職への登用を推進。3年で15人を女性管理職に抜擢しましたが、その直後から大混乱が起きました。
「私が管理職になりたいと言ったことが、一度でもありましたでしょうか?」
と詰め寄り、辞退を申し出る女性社員。あるいは、激務である営業部門での管理職は無理だと分野を限定する人。また、年上の男性部下は勘弁してほしいと言い出すなど、周囲からすれば勝手と言われても仕方のない要望がいくつも出てきたのです。
その会社は周囲に理想(ロールモデル)となる女性管理職がいないのが原因ではないかと判断。会社としてバックアップするという姿勢を示すためにも、極力、女性たちの要望に応える形で管理職の仕事をしてもらえるよう環境整備をしました。
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