「マイナス金利解除」なら前後で株価はどう動くか 過去の金融緩和解除の場面の株価推移を振り返る
しかし、マイナス金利は長期で続けると弊害があると言われます。お金を貸した人が、借りた人に金利を支払わなければならないということは経済の合理性に反しているからです。貸した人は、お金が返ってくるまでの間は「お金を使いたくても使えない」という不自由があります。また「借りた人が返してくれないかもしれない」リスクも負担しているのに、貸した人が金利を支払うのは不自然です。
また、金利をあまりにも低く設定することは、企業が経営の質を高める面でデメリットにつながります。お金を借りても支払う金利がわずかで済むなら、それを上回って、収益をあげなければならないハードルが下がるからです。
マイナス金利はコロナ禍で経営が厳しい企業への支援の面もありました。しかし、コロナ禍から回復に向かう環境なのに、企業が収益性を高める努力を怠ると、無理して破綻せずに生きながらえている「ゾンビ企業」が増えてしまい、わが国全体で見た企業の価値が高まらない原因にもなります。
低迷する「日本の1人当たり労働生産性」
昨年12月に日本生産性本部から「労働生産性の国際比較2022」が公表されました。その内容から2021年の日本の1人当たり労働生産性は、欧州やアメリカなどを含んだ先進国で構成されるOECD(経済協力開発機構)加盟の38カ国のうち29位に落ち込んでいます。
例えば、工場で製品を作るには原材料に加えて、ガスや電気なども必要です。これらを使って人間が手を加えることにより製品が完成します。この製品の販売価格から原材料や燃料など労働力以外で費やされた金額をさし引いた額が、製品を作るために加えられた「労働力の金額(価額)」となります。1人当たり労働生産性を簡単に言えば、このような労働力の金額を1年間で合計して、1人当たりで算出したものです。
この1人当たり労働生産性ですが、賃金水準と深いつながりがあります。「生産性が低いなら、それに見合った低い賃金しか得られない」という関係があるのです。至極あたりまえなのですが「働いた成果が小さければ、それに見合う賃金しかもらえない」ということです。
実際に、OECDが公表した2021年の平均年間賃金では、日本は24位でした。労働生産性とおおむね同じくらいの順位です。今後、わが国で賃金が本格的に継続して上がるには、労働生産性を高めていかなければなりません。
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