「マイナス金利解除」なら前後で株価はどう動くか 過去の金融緩和解除の場面の株価推移を振り返る

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わが国の労働生産性が低い理由について、デジタル化の遅れなどさまざまな説がありますが。本質的な理由は大きく2つあります。

1つは人が適所に配置されにくいことです。例えば、会社員をしていると身の回りで、人手が足りなくて忙しすぎる部署もある一方、言葉は悪いですがヒマな部署でたくさんの人を抱えているケースもあります。人材の流動化が十分といえない状況で、会社内でも適材適所への異動が難しい場合が多いようです。

会社から広げて業界の面から見ても、人がだぶついている業界もあれば、建設業、飲食後や運送業など人手不足の業界は、なかなか人材が供給されない状況です。人が余っている部署や業界が多いと、生産性の低い会社員も多くなって、日本全体の平均値で見た労働生産性は低いものとなります。

2つ目の理由は、マイナス金利政策とも関係します。金利が低すぎるとゾンビ企業が生き残ってしまうというお話はしました。ゾンビ企業は倒産せず、雇用を守るという観点では社会的に評価できる面もあります。しかし生産性の面から見ると良いとは言えません。収益を生まない企業なら、そこで働いている従業員の生産性は低いため、わが国の労働生産性の全体の平均値を押し下げてしまいます。

賃金の伸びが物価高の勢いに追いつかない

今までわが国の賃金が上がらなかったのは、こうした原因があったからです。しかし足元で、ようやく賃金が上昇してきました。日本労働組合総連合会(連合)が7月に発表した春季生活闘争(春闘)の最終集計で2023年の賃上げ率は3.58%、30年前の1993年(3.90%)以来の上昇です。

こうした賃金の伸びは、まだ物価高の勢いに追いついていません。厚生労働省が9月8日に発表した勤労統計調査からは、1人当たりの賃金は物価を考慮した実質で前年同月比2.5%減と、16カ月連続マイナスでした。

日銀が大規模金融緩和を解除するには、「賃金の上昇を伴う形で」の2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することが条件とされています。「実質賃金のプラス転換」が緩和解除のポイントとなるでしょう。

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