「マイナス金利解除」なら前後で株価はどう動くか 過去の金融緩和解除の場面の株価推移を振り返る
足元では、植田和男日銀総裁が9月9日の読売新聞のインタビューで金融緩和解除に向けて「年末までに十分な情報やデータがそろう可能性はゼロではない」と発言したことで、年内のマイナス金利の解除までを予想する見方も見られます。
しかし、筆者はマイナス金利の解除の時期は来年の7月あたりと見ています。これまでの円安や原油高、小麦などの原材料高が、遅れて価格転嫁されてきたことで、さまざまなモノの値上げが進んできました。しかし、こうした値上げが一巡した後は、実質賃金が回復に向かうと見られます。来年の春闘での賃上げを確認したタイミングで、日銀がマイナス金利を解除に向かうでしょう。
賃金が上がらなかった本質的な原因は、労働生産性が低いこと、とお伝えしました。今後はわが国の企業も収益性の改善に向けた努力が期待されており、それに連動して労働生産性が高まっていくと期待されます。労働生産性は短期的に改善が難しいものですが、長期的な改善方向が賃金上昇と2%の物価安定の持続的実現につながると見ています。
マイナス金利の解除前後で株価はどのように動く?
それではマイナス金利の解除前後で株価はどのように動くのでしょうか。
過去の金融緩和解除前後の日経平均株価の騰落状況を参考に考えてみましょう。
下表は足元から過去3回の金融緩和解除の場面です。3回のうちで最も古い1989年の緩和解除について、日銀は公定歩合を使って利上げを行っていました。公定歩合は日銀が民間の銀行に貸し出す金利のことです。預金金利が公定歩合に連動して決められていたため、公定歩合の水準の決定は重要なものでした。
表から当時の金融緩和解除前後の株価を見ると「緩和前」は好調に推移していました。一方、解除後は堅調な推移とはなりませんでした。利上げ自体は株価にマイナスのインパクトが強いことが理由です。
3回のうち最も新しい2006年の緩和解除の場面の株価推移も“1989年”の推移と類似点が多いと言えます。解除の前は好調な推移でしたが、解除後は下落しました。
一方、2000年の緩和解除では前後の株価は下落しています。これは1999年までのITバブル崩壊の影響を受けた形です。内閣府が公表する景気基準日付で見ると、当時の景気のピークが2000年11月ですから、その3カ月前に行われた緩和解除時には、すでに株価は景気減速を織り込み下落している状況でした。
1989年と2006年の緩和解除はそれぞれ対応する景気のピークが1991年2月、2008年2月となっています。緩和解除のタイミングから見ると、そこからずいぶん先にピークを迎えます(1989年当時は21カ月先、2008年は23カ月先)。そもそも緩和解除は景気が正常化に向かう段階で行われるものですから、こうした傾向は本来、整合的なものです。
筆者は、来年の7月あたりがマイナス金利の解除の時期と見ていますが、今回の緩和解除も1989年と2006年と同様の株価変動のパターンを予想しています。金融緩和解除に向けて好調な株価が期待されます。
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