例えば、高い目標を掲げて未達成だったAさんと、低い目標を余裕で達成したBさん、どちらを評価すべきだろうか。もし、「会社として、失敗しても挑戦意欲を持って仕事に取り組んでほしい」というメッセージを伝えたいのであれば、Aさんを評価すべきだ。
単に「達成率が高いから」というだけでBさんを高く評価すると、誰も高い目標を掲げなくなってしまう。逆に「掲げた目標に対しては、責任感を持ってやり切ってほしい」と考えているのであれば、Bさんを評価すべきかもしれない。
評価においてはこの「メッセージ」が何よりも重要だが、それだけでは部下に納得してもらうだけの評価をつけることは難しい。評価をつけることを難しくしている「よくある原因」を3つ紹介したい。
知らず知らずのうちに陥りがちなバイアス
評価をつけることが難しい原因の1つ目は、評価者である管理職に「バイアス」があるからだ。バイアスとは、その人独自の固定観念や先入観のことである。
「バイアスを持たないように気をつけている」「自分はフラットに評価している」と思っていても、人は気づかぬうちにバイアスの影響を受けてしまうものだ。その結果、評価に対して部下の不信感や不満が生まれる例は数えきれない。
●評価時に陥りがちな「4つのバイアス」
バイアスの影響を受けずに正しい評価をするためには、どんなバイアスがあるのかを知っておくことが重要だ。評価をつける際に陥りがちなバイアスを4つ紹介するので、これらのバイアスに陥っていないか意識してほしい。
▼参照点バイアス
「Aさんは確かに頑張ったけど、自分の若い頃はもっとやっていた。あれくらいで高い評価はつけられない」
このように、自分の過去の経験や基準とする人に引きずられて評価してしまうのが参照点バイアスだ。自分の得意なことに関しては厳しく、不得意なことに関しては甘く評価してしまう。自分基準ではなく、定義された評価基準をもとに評価することが大切だ。
▼同調性バイアス
「Bさんとはウマが合うし、飲みに行くといつも熱心に私の話を聞いて学ぼうとしている。期待できるから、高い評価をつけよう」
このように、メンバーの感情や人間関係、自分の好き嫌いに引っ張られて評価してしまうのが同調性バイアスだ。自分と似た人や共通点を持つ人に対して評価が甘くなりやすい。また、部下や部内の人間関係に配慮しすぎるあまり、評価が全体的に甘くなり、相対評価にほぼ差をつけないのも同調性バイアスの一種だ。評価の際は、私情や遠慮、好き嫌いを排除することが大前提になる。
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