罵声は来ない「女性3人」のごみ収集チームの凄み 収集に来てくれるのを楽しみに待つ高齢者も

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実際に作業に当たっていた女性スタッフから女性だけのごみ収集チームの受け止めを聞くことができた。

良い点としては、優しい目線で自分たちの作業を見てもらえることだという。男性スタッフとともに収集をしていると、「邪魔だ」「うるさい」と怒鳴られることもあるが、女性のみだと強くあたってくる人はおらず、優しい言葉をかけてくれる人がほとんどだという。

また、同じ動作をしていても、女性のほうが柔らかく見えるようで、丁寧に細やかに仕事をしている印象を与えられているのではないか、と受け止めていた。さらに、チームとしても女性同士のほうがコミュニケーションを取りやすくチームワークが良くなる、とのことであった。

一方、困った点としては、力仕事が多い現場では、どうしても男性の力が必要になることがあるという。

飲食店から排出される厨芥ごみが入ったバケツや、水分を多く含んだごみが入ったバケツを持ち上げる際は、男性スタッフがいてやっと収集できるが、それを女性2人で持ち上げるとなると限界を感じる。またその際に無理をするので腰などを怪我する不安がある、とのことである。

厨芥ごみが入ったバケツはかなり重たい。この日は水気がなかったので女性2人で持ち上げられた(筆者撮影)

このような不安を抱えながらも、女性スタッフはごみ収集という仕事を選んだ以上、それを完遂するモチベーションを持って仕事に従事していた。

今後の課題

今回の見学により見えた今後の課題は、女性が継続して働ける環境をソフト面とハード面の両面から整備し続けていくことだと思える。

第1に、力がどうしても必要な現場では、女性だけではキツいという声が聞かれた。女性に限らず重たいものが持ちづらい人のために持ち場を作る必要があるだろう。ほかの作業と比べて負担が少ない集合住宅のコンテナによる収集のような作業をまとめて割り振っていくなどだ。ただその際には、男性スタッフとの意思疎通や仕事の公平性を考慮しなければならない。

第2に、勤務形態の整備だ。例えば子育て世代には保育園に預けた後の時間から業務を始められるような業務形態を考えていく必要があるのかもしれない。また、清掃事務所の最寄りの保育園に優先的に預けられるような仕組みも検討の余地があるのではなかろうか。これは女性に限らず多様な働き方が求められる今後必要な取り組みだ。

第3に、女性用施設の整備である。これまで男性を前提に施設の整備が行われてきたため、区の清掃事務所では女性用のロッカー室や洗身施設が整備されていないところもある。また、清掃工場の一角にトイレがあるが、男性用を男女で共用する形で利用されている。早急な整備が必要であるが、その際には国からの資金的支援がなされるような仕組みが期待される。

われわれの生活に必要不可欠な清掃サービスを継続させていくためにも、人材不足を解消していくための手立てをできるところから打っていく時期に来ているのだと思える。

筆者はごみ収集業務も含めた自治体内の生活環境を衛生的に維持していく仕事が、子どもの憧れの職業になればいいと真剣に考えている。多少の汚れは伴うが、住民から温かく励まされる中で仕事ができ、多くの人々から感謝されながら自治体の生活環境を維持していく仕事に、さまざまなバックグラウンドを持つ人が参入してきてほしく思う。

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藤井 誠一郎 立教大学コミュニティ福祉学部准教授

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ふじい せいいちろう / Seiichiro Fujii

1970年生まれ。同志社大学大学院総合政策科学研究科博士後期課程修了。博士(政策科学)。同志社大学総合政策科学研究科嘱託講師、大東文化大学法学部准教授などを経て現職。専門は地方自治、行政学、行政苦情救済。

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