佐藤優「カラマーゾフで読み解くロシアの論理」 「人間から自由を取り上げなければならない」

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「閉ざされた世界」に戻ってしまったロシア人の価値観や心情を知るには、ドストエフスキーの小説に新たな光を当てる必要がある(撮影:坂本禎久)
2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻は世界を大きく揺るがし、今なお戦闘が終わる気配はありません。日本を含む西側諸国はロシアの蛮行を非難し続けていますが、それだけで停戦は実現できるのでしょうか。
作家で元外交官主任分析官の佐藤優氏は、戦争を止めるにはロシア人の内在論理を知ることが重要であり、それにはドストエフスキーの世界的名著である『カラマーゾフの兄弟』を読むことが最適だと主張します。そこではいったい何が描かれ、何が語られているのでしょうか。『これならわかる「カラマーゾフの兄弟」』から抜粋してお伝えします。

ロシアはもともと「閉ざされた国」だった

2021年はドストエフスキーの生誕200年。翌年2月24日にはウクライナ戦争が始まったこともあり、ロシア文学への関心が高まってきているように感じます。ドストエフスキー作品には現代を生きるうえでのヒントが凝縮されており、不安定な時代にこそ注目を浴びます。

それに加えて、いまドストエフスキーの長編小説『カラマーゾフの兄弟』を読むべき理由があります。ロシアとロシア人の内在的論理を知るためです。2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻は、歴史の転換点となる大事件だと言えます。

ロシアはこれをウクライナに住むロシア系住民をネオナチ政権(ゼレンスキー政権のこと)から保護するための「特別軍事作戦」だと主張していますが、客観的に見て戦争です。ロシアの行為は、ウクライナの主権と領土の一体性を毀損する国際法に違反する行為だと言えるでしょう。

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