ある意味「猪木を越えた」棚橋弘至がそう語るワケ 結局「ストロングスタイル」とは何だったのか?
――そもそも、アントニオ猪木さんの「ストロングスタイル」と、魅せることを意識した棚橋さんのスタイルは異なるように見えます。
試合に関しては大差ないと思いますね。猪木さんが持っている殺気などはとても真似できないですけど、体を張ってファンの人に楽しんでもらい、勝ってチャンピオンを目指す、っていう根源的なところは変わらないのかなと。
ただ古いファンの方たちから、「棚橋はストロングスタイルらしくない」と言われたことがありました。でも、「じゃあストロングスタイルって何?」と聞くと、明確に答えられる人はいないんです。2012年に猪木さんと対談したとき、「ストロングスタイルって何ですか?」って聞いたら、「そんなの知らねえよ、誰かが勝手につけたんだよ」って(笑)。
そういうもんですよね、って納得しました。だから僕はストロングスタイルを離れたんです。新日本プロレスでストロングスタイル以外のことを全部やる、というほうがやりがいもありますしね。
コロナに打ちのめされた世間に、元気を届ける
――近年は新日本プロレスに限らず、プロレス界全体の人気が高まっている印象ですが、棚橋さんはどう見ていますか?
プロレスは、技がすごいとか、この選手が好きとか、そういう基準で見てもらっても全然いいんです。けれど、やられても諦めずに立ち上がり、頑張っている選手の姿からエネルギーをもらえるところが、世間とシンクロしているんじゃないかなと。
力道山先生は戦後の疲弊しきった日本を盛り上げたし、猪木さんや馬場さんもその延長線上にあった。今も、コロナに打ちのめされた世間に、プロレスは元気を届けている。実は、陰で大事な役割を果たしているのが、プロレスなんじゃないかなって気がします。
――逆に、プロレス界の課題や、伝えたい提言はありますか?
いや、もう素晴らしいですよ。オカダ(・カズチカ)は背も高くて格好いいし、内藤(哲也)もいい。後輩レスラーもたくさん育っているんだけども、アントニオ猪木、藤波辰爾、長州力など昭和のレスラーと比べると、みんなクセがないんです。クセって実は大事で、心に残るんですね。だからモノマネもされるじゃないですか。でも、クセってナチュラルボーンなので、後から付けようと思ってもできない。
しかも本人は、自分にクセがあることに気づいていないんです。武藤(敬司)さんも、自分を普通だと思っているけど、大クセ者ですからね。(元新日本プロレスの)中邑真輔なんかもクセの塊で。自分で気づいてないから面倒くさいんですけど、スターは周りが手を焼くものなんですよ。何かに突出しているから、何かが欠けている。
でも僕は全部できちゃうから、一番クセがないかな。周りからは「結構ありますよ」って言われますけど(笑)。
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