新幹線のぞみ、全車指定席でも残る「不公平感」 ピーク期の「席取りゲーム」解消だが快適性は?

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全車指定席化されれば予約なしにふらっと乗れる自由席の気軽さは失われる。

指定席と自由席の話題になると、私は鉄道紀行作家・宮脇俊三の『汽車との散歩』(新潮社)にある言葉を思い出す。「指定席は鉄道に限らず『不自由席』だ」というくだりである。学生時代にこの言葉と出会ったとき、私は「御意」とひざを打った。

お金が乏しく自由席に乗ってばかりという学生の境遇を慰められたということもあるが、実際に指定席では多くの場合一方的に席が決められてしまうし、風景を追って自由に座席移動することもできない。隣に来る人も選べなかった。

そのため予約不要で安価な自由席でよく旅を楽しんでいたものである。混雑が予想されるとき指定席を予約して車窓より着席を優先したこともあったが、自由席はよき友であった。

自由な一方でデメリットも

一方で自由席ならではの苦行も味わった。もはや学生ではなかったが、20年くらい前の正月、新潟発青森ゆきの特急「いなほ」の自由席に新潟から鷹ノ巣まで乗った。寒い中ホームで過ごし乗車したときにはすでに満席で通路も立ち客であふれかえり、座れなかった。新潟発車後ようやく着席できたのはおよそ3時間半を経過した秋田からだった。

私の乗車した号車では、通路に座り込む人、なんとなく通路側座席の肘置にうっすら腰を掛ける人、トイレへ向かうために他の客をかき分けて通路を進む人、その人に対するイライラを隠そうとしない人がいて、疲労感と不穏な空気が渦巻いた。遠くの席が空きそこに座る人がいれば、安堵したその顔を見て私の心に妬みが生まれた。

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