トヨタの製造現場で「今、起きている事」のすべて モノづくりワークショップで見た挑戦の果実

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こうした改良について、トヨタは技術を解析するソフトウェア「Topcast」を使い、さまざまな条件を盛り込んだ計算を駆使して改良を進めている。そして、この解析の仕組みをまとめた平面図、「良品条件関係図(機能ブロック図)」を今回、社外に初公開した。

それを見ると、ギガキャストの各工程の条件として、材料の熱伝導率、安定域までの保有熱量、離形後のスプレーの照射量や時間など、数多くのパラメーターを設定していることがわかる。

こうした図の構成方法やパラメーターの種類、そしてそれらをどう調整するかは、数値によるデータ解析のみならず、モータースポーツ用や市販車向けの鋳造で実績のある匠(たくみ)の意見も積極的に取り入れられている。

デジタルを活用した匠の技能の継承(写真:トヨタ自動車)

つまり、「技能・技術」×「デジタル・革新技術」の融合には、TPS(トヨタ生産方式)という企業哲学が生きているのだ。

トヨタによると、ギガキャストの生産技術は今後、「号口(量産)に向けて、製造コストや部品としての性能と対応する圧力との最適化を探っていく」とし、一体成型物の大きさについては「車体全体を一体成型することも技術的に可能」だという。

そのうえで、「車体中央に位置する電池の技術革新。また、人やロボットによる加工や組立工程を考慮すると、車体の前後と中央の3分割構造が採用される(その一部にギガキャストを採用する)可能性が高い」という考え方を示した。

5種類の次世代電池

次に、電池関連の技術について。テクニカルワークショップ2023で、すでに「2028年までにBEV向けで5種類の新規電池を量産する」と公表していた。

トヨタが2028年までに量産する5種類のBEV用の次世代電池(写真:トヨタ自動車)

具体的には、現行「bZ4X」の三元系をベースとした高性能な「パフォーマンス版」と、LFP(リン酸鉄リチウム)にバイポーラ型を採用する「普及版」、正極にニッケルを使う「パフォーマンス版・バイポーラ」、そして全固体電池が2種類の合計5種類だ。

このうち、今回はバイポーラ型LFPと全固体電池の開発試作ラインの一部工程を視察した。まず、バイポーラ型LFPについてだ。

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