僕たちは、だから「会社勤め」を辞めました

パパたちも押した「やめスイッチ」

大学卒業後、大手IT企業に就職した浜田さん。学生時代から「一部上場企業に就職して、理想の結婚相手を見つけて、子どもをもうけ、マイホームを購入する」という未来予想図を描き、まさにそのとおり実現するかに見えた。ところが、子どもができてからその予想図はだんだんと狂い始める。

子どもを授かったころの浜田さんは、ベンチャー企業で経営を任される立場になっていた。仕事の責任は重く、早出・残業は当たり前の毎日。通勤時間は片道1時間以上。家のことについては「10のうちの2もやっていなかった」という。

「自分は外でおカネを稼ぎ、妻は家を守る」。なんとなくそう考えていた浜田さんに対して、「仕事は生きがいのひとつ。辞められない」と言う妻。産後8カ月で妻が仕事に復帰すると、慌ただしい毎日の中で衝突を繰り返すようになる。

家族の近くで仕事がしたい

団地が立ち並ぶ地域にあるカフェ「タマラボ」を運営する浜田健史さん。タマラボは地域で起業したい若者や子育て世代などが集まる拠点となっている

そんな中、東日本大震災に見舞われた。浜田さんは仕事で新宿にいた。電話はまったくつながらない。家族がどこで何をしているのかわからない不安感は、想像を超えるものだった。それをきっかけに「家族を大事にしなくては」と強く思うようになる。

1時間以上もかけて通勤するのではなく、家族とともに生活する場の近くで働くことができればと思うものの、なかなか仕事はない。だったら自分で起業しようと思い立つ。「周囲に聞いてみたら、自分のように家族の近くで働きたいと考えている人は意外と多かった。自分がモデルケースになって、地域にネットワークと交流の場を作ろうと考えました」(浜田さん)。

職住近接を実現してみると、時間にゆとりが生まれ、自然と育児や家事に参加するようになった。妻との衝突も激減。「公私の境目が薄れて、ワークもライフも人生の中に全部入っている感じです」と浜田さんは言う。

会社員時代のように安定した収入は見込めないが、生活に困るほどでもない。仕事に全身全霊を尽くしたところで、家族と気持ちが離れ、向き合えなくなるのならば、それは何の価値もない。

「スーツ着てガツガツ働いて、高い収入を得るだけが生きがいじゃないんだって思える男性がもっと増えればいいと思っています。ライフスタイルは自分で作るものです」(浜田さん)。

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