もし、長年上昇が続いた不動産価格が下落し続けるとともに、銀行の自己資本が損われて金融機関の経営問題が深刻になれば、平成バブル崩壊後の日本経済と同じ道をたどりかねない。この懸念が、中国の不動産企業の経営不振が報じられるたびに強まっている。
権威主義下での経済政策の限界が露呈か
筆者は以前「中国経済は今後『共同富裕』の推進で衰退する」(2021年12月12日配信)で、習近平体制の政治基盤が強まる中で、「共同富裕」を掲げる政策について慎重な考えを述べた。
「格差是正」を重視するのであれば市場経済から距離を置く対応が予想されるので、経済成長が抑制されるリスクを指摘した。これを書いてから1年半近くが経過するが、懸念したとおり、中国経済の停滞が長引いている。
筆者は中国経済や政治動向に詳しいわけではないが、金融市場に携わるエコノミストの立場で注意深く観察している。
高成長局面を終えた同国経済が、成長減速の段階にさしかかっているのは明らかである。多くの場合、経済成長率が下方屈折する局面での政策運営は難しい。さらに、同国では、経済成長を軽視する権威主義的な政治姿勢が影響しているためか、経済成長を安定させる経済政策が十分機能していないようにみえる。
同国では4~6月期に経済成長率が失速したことに加えて、消費者物価が前年対比で一時マイナスに転じた。エネルギー・食料品を除いた「コア消費者物価指数」は前年比+0.8%(8月時点)であり、デフレに至っているとまでは言えない。
ただ、2022年以降の日本を含めて、世界各国でインフレ率が高まる一方で、中国では低インフレが常態化しつつある状況が際立っている。経済活動を抑制してきたゼロコロナ政策が解除されても、さまざまな要因によって国内需要は相当弱いとみられる。
もし、このまま中国で適切な経済政策が行われなければ、平成バブル崩壊以降の日本が経験した、財・サービスのデフレと資産デフレの悪循環とともに、経済成長が停滞する「日本化」”Japanification”が起きる。
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