ガン発症5年、コンサルタントが感じる後悔と感謝 ガン患者のサポートを「受ける」から「する」側へ

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Sさんの言葉を聞いてハッとした私は、

「そうですよね、昔と同じ生活にならないように気をつけます」と急いで答えた。

「自分自身が、白血病になったことを忘れ始めてるのかな……治療してからこの夏で丸5年。たしかに病が遠のいた気がするなぁ」

Nさんとのオンラインミーティングが終わった後、そうふと思った。

がんは、一般的に術後5年間再発しなければ完治したと見なされる。白血病の場合、手術はしないので、いつの時点を起点とするかは私も正確に把握していないが、寛解のための抗がん剤治療からこの夏で丸5年になる。

入院時からお世話になっている主治医に7月の検診の際に、この夏で治療から5年経過すると告げたら、笑顔で「おめでとうございます」と言ってくれた。そんなやり取りをした後、「今年の夏で、一区切りなんだな」と心のなかで呟いたのを覚えている。

「病気をした人」と扱われる機会が減った

区切りの期間を迎えたこと以外にも、病が遠くなったと感じる理由がある。急性リンパ性白血病の発症のため緊急入院したとき、小学5年生と1年生だった娘たちは高校1年生と小学6年生になった。長女が中学受験を続けられるかどうかが、当時の私にとって重大なテーマだったが、現在は次女が中学受験準備の真っ最中。4年前と相変わらず過酷な小学6年生の夏休みを過ごしている最中、当時のことを思い出しながら、「お姉ちゃんのときよりはましだよね。ママが元気で、勉強のサポートできるんだから」と自分にも次女にも言い聞かせながら過酷さに耐え忍んだ。

2年半前に復職した職場では、私が3年間休職していたことを知らない同僚と一緒に仕事をすることが増えてきた。

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