中国にとってまだまだ課題は多い「中国製造2025」ですが、アメリカはこの政策を大きな脅威ととらえています。
「中国が、革新的技術(AI、5G通信など)が生み出す巨大市場の覇権をアメリカから奪い取ることを宣言した」とみなしています。
つまりそれは、中国がアメリカ軍とならぶ世界一流の軍をもち、世界覇権に挑むということです。中国は軍民融合政策をとっているので、革新的技術は必ず軍事技術に使われます。
「中国製造2025」は、安全保障にかかわる問題です。ところが日本では、このような危機感はありません。「中国製造2025」は、「中国が産業の世界覇権をめざすもので、日本の経済に打撃をあたえる恐れがある」と、経済的な側面でしか語られません。しかし、問題の核心は経済ではなく、安全保障です。
トランプ政権時代のアメリカは、強硬的な具体策をとって対応しました。最先端技術や機微技術を中国に流出させないために、もともとあった「輸出管理規則(EAR)」をより強化した「輸出管理改革法(ECRA)」を施行しました。すると中国はこれに対抗し、2020年、輸出規制措置をより強化する「輸出管理法」を成立させました。
世界の企業が選択の時を迎えている
先端技術をもつ世界の企業は、アメリカにつくのか、中国につくのか、態度を明らかにしなければいけない時期にきています。
このような米中摩擦の高まりから、中国は2018年以降、「中国製造2025」について公に語らなくなりました。
しかし2021年3月、全国人民代表大会(全人代)で採択・公開された「国民経済・社会発展第14次5か年計画と2035年までの長期目標要綱」には、「中国製造2025」と同じような概念が盛り込まれ、重要技術の国産強化をめざす方針に変わりがないことがわかりました。
この「第14次5か年計画」では、経済・産業・社会・行政の4つの側面から「数字中国(デジタルチャイナ)」建設を前面に打ち出しています。
デジタルチャイナ建設のための技術基盤が、AI、ブロックチェーン、クラウド、ビッグデータ、5Gです。これらのデジタル技術の社会実装を都市部だけではなく、これまでおくれをとっていた地方都市や農村(下沈市場)などにも広げていくとしています。
約10億人をかかえる「下沈市場」は潜在力の高い新興市場です。ここが今後の経済成長の起爆剤となる可能性があります。
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