南場氏右腕が見た、DeNA不格好経営の舞台裏 「黒子の流儀」を書いた春田真氏に聞く

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──当時を「異様に腹が立った」と振り返っている。独立していった共同創業者の川田尚吾氏や渡辺雅之氏がうらやましかった?

家に帰って夜中に「何だろう、俺」みたいな。自分が果たしてきた役割は、やりたかったことより、会社のためにやるべきことだった。でも結局は、会社の今後を考えると辞められなかった。だって5月に南場さんが辞めることになり、6月に株主総会、7月は決算発表で投資家回りがある。8月に落ち着くと思ったら、TBSから連絡があり、あきらめたはずの球団買収の話が生きていた。

社長を支える人や組織を新しく考えたらいい

──南場氏が守安(功社長)氏を後継に指名したように、春田氏も後継者を育ててきた。

何度かチャレンジしたが、無理と思ってやめた。今は守安さんに社長が交代したので違うかもしれないが、どれだけ優秀な人が来ても、僕と南場さんが費やしてきた時間は絶対に超えられない。代わりの人を置いても比較されるだろうし、何か問題が起こると「春田さんだったら」となる。しかも創業初期からいるので経理や広報、営業など範囲が広い。

これまでのアライアンスもほぼすべて手がけてきた。KDDIと提携した携帯電話専用オークションサイトの「モバオク」や、ベンチャーへの投資案件は僕から全部ノックしに行った。球団も買収した。同じことを一人でやるのは難しいので、役割を細かく分けて、社長を支える人や組織を新しいやり方で考えればいい。社長は一人しかいないが、僕の役割は一人じゃなくて構わない。

──二人羽織経営は難しい。

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別に二人羽織経営って、僕が言ったわけでもないし意識したこともない。南場さんに限らず、誰かと同じことやっても仕方がないとつねに考えてやってきただけ。

──DeNAでやり残したことはありませんか。

ない。反省はあるが、やり残したことはない。僕のような経験を持つ人は、あまり世の中にいない。自分の経験や考え方を一つの事業につぎ込むよりも、レバレッジを利かせたほうがいいと言われたことがあり、確かにそうだと思った。だから次はベンチャーを支援する仕事を考えている。一人でやるのではなく、組織を大きくして業務としてやってみたい。結果的にはファンドみたいな事業になると思う。

前田 佳子 東洋経済 記者

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まえだ よしこ / Yoshiko Maeda

会社四季報センター記者

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