「イスラエル」知られざる先進国の高速道路事情 電子決済に渋滞…国土を縦横に走る道の今

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また、2号線で見たような渋滞も、テルアビブやエルサレムでは、高速道路でも一般道でも頻繁に起こっており、クルマの増加に道路の整備が追い付いていない状況が見えてくる。

両都市ともライトレール(最新型の路面電車)の整備や道路の中央にバス専用レーンを設けるなどの施策も行っているが、根本的な解決は遠そうだ。

テルアビブの海岸通りでは、電動キックボードの姿が多く見られた(筆者撮影)
テルアビブの海岸通りでは、電動キックボードの姿が多く見られた(筆者撮影)

余談だが、今回の旅ではイスラエルの出産事情も垣間見えた。イスラエルではユダヤ系(人口のおよそ7割)で3~4人、アラブ系(人口のおよそ2割)ではさらに多くの子をもうけるのが普通であり、移民の受け入れにも積極的なので、少子化や人口減少の心配はまったくないとのことである。

しかし、教育費の無料化が達成されているわけではなく、社会保障制度がきっちり支えているわけでもなさそうだ。家計が苦しくても出産や子育ては「何にもまして喜ぶベきこと」で、「先々の生活費・教育費はなんとかなる」と、子どもを歓迎する価値観が浸透しているという。

世界遺産に登録されているエルサレム旧市街、中央は岩のドーム(筆者撮影)
世界遺産に登録されているエルサレム旧市街、中央は岩のドーム(筆者撮影)

実際、宿泊したリゾートホテルで、子どもが3人も4人もいる家族が楽しげに休暇を満喫している様子や、家族・親戚総出で日本の成人式のような男子13歳、女子12歳の誕生日(男子はバル・ミツワー、女児はバッド・ミツワーと呼ばれる)を祝う場面を何度も見て、少子化対策は「小手先の手当や補助では大きく変わらないのではないか」と思い知らされる旅でもあった。

なお、街を行き交うクルマは、ドイツやフランス、チェコなど欧州系のメーカーの他、韓国車、日本車もよく見かけた。自動車の取得費用は相当高額だと聞いたが、その中でも日本車の人気は高いようで、トヨタのエンブレムをつけたクルマもよく見かけた。

今秋「成田~テルアビブ便」増便へ

成田~テルアビブ便は今秋さらに増便される予定で、行き来も一層便利になる。

イスラエルとパレスチナおよびその周辺は、中東の紛争の火種になることが多いが、今は比較的穏やかな時期でもあり、訪れてみたい国の1つである。

エルサレム旧市街にあるユダヤ人の聖地「嘆きの壁」や、キリストが処刑された地に立つ「聖墳墓教会」、またエルサレムからクルマで30分ほどのパレスチナ自治区のベツレヘムにある、イエスが産声を上げた地に立つ「生誕教会」などで信者が一心に祈る光景は忘れがたい思い出となった。

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佐滝 剛弘 城西国際大学教授

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さたき よしひろ / Yoshihiro Sataki

1960年愛知県生まれ。東京大学教養学部教養学科(人文地理)卒業。NHK勤務を経て、NPO産業観光学習館専務理事、京都光華女子大学キャリア形成学部教授、リベラルアーツ・ジャーナリスト。『旅する前の「世界遺産」』(文春新書)、『郵便局を訪ねて1万局』(光文社新書)、『日本のシルクロード――富岡製糸場と絹産業遺産群』(中公新書ラクレ)など。2019年7月に『観光公害』(祥伝社新書)を上梓。

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