もっとも、アメリカの想像力の背景には政治制度や自由主義的な文化の影響があるといわれ、さらにDARPA(国防高等研究計画局)のように想像を具現化する仕組みが存在してきたことはよく知られている。
だとすれば、中ロのような権威主義体制下でアメリカと同様に技術をめぐる想像力を発揮し、他国に受容させる仕組みを構築するのは容易ではない。
その一方で、中国が新興技術をめぐって発揮する想像力というものがあるならば、それがアメリカと同じようなものである必然もなく、そこに生じる固有の政治的、文化的、制度的影響を丹念に観察していく必要はあるだろう。
日本ができること、すべきこと
では、日本はどうだろうか。まず指摘すべきは、日本でも市場創出的な技術戦略の重要性はしばしば議論されてきたことである。それは実際に、内閣府がDARPAのマネジメントを取り入れ、ImPACT(革新的研究開発推進プログラム)を実施することにつながった経緯もある。
しかしImPACTは十分な成果をおさめたとは言えず、多くの批判も受けている。その一因が文化や社会構造に由来するのだとすれば、乗り越えるべきハードルは高いのかもしれない。
それでも、自国の戦略に照らし合わせて想像力を発揮すべき分野とそうでない分野を特定する努力を続ける必要はあるし、少なくとも他国の想像を予測し、キャッチアップするための基盤形成は無駄にはならないだろう。そのためには、日本独自の想像力の源を常に探り続けていかなければならない。
(齊藤孝祐/地経学研究所 新興技術グループ 主任客員研究員、上智大学総合グローバル学部准教授)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら