しかし「国家量子イニシアティブ法」(2018年12月)の成立を経て、より戦略的なQISへの取り組みが進められるようになると、すでに中国がQIS分野に注目していたこととも相まって、米中の量子競争は加速した。さらにバイデン政権期になると、アメリカと同志国との間のQIS研究をめぐる協力も多角的に展開されるようになった。
こうしてみると、QIS分野においても、アメリカが軍事、経済の両面における応用のあり方を示すことで、各国がのるべき(あるいは、のることを強いられるようなかたちで)新たな土俵を作り上げることにつながったようにも見える。
想像をめぐる競争、実証された技術をめぐる競争
もちろん、新たな技術を獲得した国家が先行者利益を得つつ、それを見た他の国々がキャッチアップを目指すというのはこれまでにも繰り返されてきた。しかし、過去に生じた技術競争のパターンを見ると、実証された技術をめぐって進む競争と、「戦略的な想像」をめぐって展開される競争は異なるものとして捉えることができそうである。
前者のわかりやすい例が核戦力であり、アメリカが先行して開発した核爆弾が広島・長崎に投下されたことによって各国は核戦力の重要性を強く認識し、冷戦期の核軍拡競争が加速した。それとは別の例として、湾岸戦争では情報通信技術の発展を基礎としたアメリカ軍のネットワーク化が戦力の大幅な向上につながることが証明され、各国はその模倣に努めることにもなった。
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