「ポスト柳井」に浮上、44歳ユニクロ新社長の手腕 柳井氏が標榜する「チーム経営」は実現するか

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塚越氏はメディアやアナリストを前に、北米事業が2005年の参入から約17年かけて「創業以来、初の通期黒字化」が目前に迫っていると説明。そして実際、北米事業の2022年8月期は黒字で着地した。

ユニクロの北米事業は、2005年のニュージャージー州での出店を皮切りに始まった。当時を仕切っていたのは、柳井氏の右腕として知られていた堂前宣夫氏。コンサル大手のマッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパン出身で、1998年にファストリに転じた。

堂前氏は10年以上にわたり役員としてサプライチェーンや欧米事業などを管轄し、副社長も歴任。しかし2015年頃にファストリを去り、2021年からは「無印良品」を展開する良品計画の社長を務めている。

難題続きだった北米事業

北米事業の黒字化は簡単ではなかった。日本やアジアほど知名度がなかったため、ニューヨークのソーホーや5番街といった目抜き通りへ大型出店を進めたことで先行投資がかさんだ。こうした旗艦店は一定の効果を発揮したものの、進出10年が過ぎてもユニクロは知名度の低さに苦しみ続けた。

さらに衣料品の販売は天候に影響を受けやすく、高い精度での販売管理が欠かせない。アメリカはユニクロの多くの服を生産している中国から距離があり、商品管理の難易度が高かった。

冷夏や暖冬の影響で計画未達となるたびに、値引き販売を強いられた。売り上げ予測が難しいうえ、販売好調な商品も再入荷まで日数がかかるため機会ロスが出てしまう。塚越氏は、北米事業のこうした課題と向き合う必要があった。

2022年4月の決算会見で塚越氏は「事業構造の大改革を実行した」と説明した。不良在庫を一掃して商品発注や販売期間の管理を強化することで、値引きに依存した販売慣習からの脱却を目指した。

商品仕入れ日数の問題については、船便より短い日数で着荷できる航空便を活用。売れ筋商品の追加投入を迅速にできるようにした。こうした取り組みの結果、粗利益率(売上高に占める粗利益の占める割合)はコロナ前に比べて約8ポイント改善した。

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