TBSが300億円で「やる気スイッチ」を買った真意 佐々木社長が重視する「視聴率」とは異なる指標

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――配信市場が拡大する中で、これまでのテレビ視聴率とは別の指標が求められているように感じます。コンテンツ作りを強化するに当たって何を重視していきますか。

僕らは今、「ライフタイムバリュー」という考え方を重視しようと思っている。1つのコンテンツがその生涯でいくらを儲けたかという指標だ。それを数値化して最も儲けたコンテンツが偉いんだ、という意識改革をしようと旗を振っている。

以前「MIU404」というドラマがあり、その中で出てきたメロンパン号という車両が話題になった。その車が日本全国を走るとお客さんが集まり、たくさん商品を買ってくれた。例えばこれらをカウントすると何千万円、あるいは何億円になっているかもしれない。

昔はテレビの視聴率だけで褒められていたが、今は必ずしも視聴率イコールお金とはならない。コンテンツが後々派生していくことで価値が最大化される。教育コンテンツのアーカイブ活用もまさにその1つになる。

最近までは視聴率にリンクして社長賞をあげていたが、今後は放送から4年たった後に社長賞をあげるようなコンテンツが出てくるかもしれない。放送したときの視聴率が低くても、その後の配信やイベントで儲けを生んでくれればそれは社長賞だ。

「PBR1倍割れ」への受け止めは?

――視聴率はもはや重要ではない、ということですか。

地上波が最優先ということはなんら変わらない。ただし、昔は精神主義が強く、地上波だけの数字で頑張ることが美しいとされていた。今は地上波以外の窓口でも展開していくのが理想の姿だ。

――東京証券取引所は日本企業のPBR1倍割れを問題視していますが、テレビ局は総じてPBR1倍割れの状況です。資本効率の低さについてはどのように受け止めていますか。

これは申し訳ないが、報道機関としてどんな災害があったときでも報道を続けられる基礎体力を持っておく必要がある。その前提は普通の企業とは違う。僕らはCMがなくても続ける必要があり、停電になっても対応できる設備を確保するには、キャッシュも必要となる。

あくまでそれを前提としたうえで、PBRで1倍を目指すことや株価を上げるという、これまで語ってこなかった部分は重視し始めている。とりわけ今東証が言っているPBRで1倍という指標は十分に考えており、ステークホルダーのために株価を上げる努力も当然していく。

髙岡 健太 東洋経済 記者

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たかおか けんた / Kenta Takaoka

宮崎県出身。九州大学経済学部卒。在学中にドイツ・ホーエンハイム大学に留学。エンタメ業界担当を経て、現在はM&Aや金融業界担当。MMTなどマクロ経済に関心。

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