TBSが300億円で「やる気スイッチ」を買った真意 佐々木社長が重視する「視聴率」とは異なる指標

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――少子化の時代でも、教育領域は伸びていくと見ていますか。

教育事業といっても、昔われわれが受験していた頃の学習塾のイメージとはまったく違う。

少子化は確かに真剣に考えなければいけない問題だが、逆に子供1人ひとりに使うお金は増えている。学習塾以外のところで市場が伸びているのも間違いない。教育事業は少子化で厳しい、という図式は必ずしも正しくないと思っている。

TBSホールディングスの佐々木卓社長
ささき・たかし/1959年7月生まれ。早稲田大学卒業後、1982年に東京放送(現TBSホールディングス)入社。グループ経営企画局長などを経て、2013年にTBSテレビ執行役員編成局長。2015年に当社取締役を経て2018年から現職(撮影:尾形文繁)

――やる気スイッチグループとTBSの既存事業の間で、具体的にどうシナジーを?

すぐ思いつくのは、教育現場におけるニュースやバラエティの素材といったアーカイブの活用だ。今は「探究学習」が重視されるが、問題提起をするための映像素材がわれわれには大量にある。

もう1つは、やる気スイッチの皆さんと一緒に映像を共同制作し、それをIP(知的財産)として世界中で展開していくことも考えられる。

――教育コンテンツの映像制作などは、TBSが持つリソースだけでは難しいのでしょうか。

教育では、子供たちの心に入っていき、彼らがどう反応するかが重要だが、これまでテレビは「流しっぱなし」だった。子供たちが求めているものは何か、どんな反応をしたのかという分析は、(やる気スイッチグループのような教育事業者と)タッグを組まないとなかなかわからない。

逆に、やる気スイッチ側は子供たちが求めるものや反応には詳しいが、それを具体的に映像化し、より興味深く面白くするノウハウ、メソッドに関してはあまり持っていないだろうから、二人三脚でうまくやっていける。

出口は多いほうが儲けられる

――やる気スイッチグループを買収した同日、動画配信サービスを展開するU-NEXTへの追加出資により、同社を持ち分法適用会社化することを発表しました。「テレビ離れ」が進む今、TBSにとっての放送と配信の位置づけを教えてください。

僕らは一義的に「テレビ離れ」と言われることをあまりよく思っていない。テレビという機器から離れるのか、テレビコンテンツから離れるのか、というのは全然違う話だ。

今でもテレビの番組制作ノウハウは配信やYouTubeの世界でも主流中の主流で、今後もテレビコンテンツ自体はますます有意義になっていくだろう。ただし、出口は地上波だけではないということだ。われわれは配信を各放送局の中でもいちばん熱心にやってきたと思う。

とくに無料配信に関しては、(無料動画配信サービスの)TVerにテレビコンテンツを出すと地上波とカニバリになり、損ではないかという見方もあった。それはもちろんわかるが、出口をいっぱい作り、より大勢の人に見てもらうほうがコンテンツは儲けられる。僕らはコンテンツを提供するコンテンツプロバイダーとして利益を出していく方向性を強めた。

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