出口:そうなんです。暴力をふるうわけでも、否定的な態度をとるわけでもない。食事をあたえ、快適な家があり、おこづかいもあげているんだから親としての役目は果たしているでしょ、というのがアヤノの親でした。仕事が忙しく、子どもの話をちゃんと聞けていないと思う親御さんはヒヤリとするかもしれませんが、決定的に違うのは「忙しいから、あとで聞く」のではなくて「ずっと聞かない」のです。子どもに関心がないからです。
小川:事例のアヤノは愛情飢餓状態だったので、半グレメンバーのリントに優しくされて夢中になってしまいました。そして、犯罪に手を染めることに……。自分を認めてくれる人がいた、救ってくれる人があらわれた、と思ったら、実はお金目的で利用されていたという話は切なかったです。
出口:偏った「無関心型」の保護者のもとで育った子は愛情飢餓状態になりやすく、ごく普通の優しさにも過剰に反応して強く惹かれてしまうことがあります。しかも、コミュニケーションに問題を抱えていることが多いですから、孤独です。そういった子はプロ犯罪者からしたら「ちょろい相手」なんです。救ってくれたと思った相手に、犯罪の手先として使われているなんて本当に悲しいことですよね。
小川:ところで「半グレ」とは、どういう集団なのでしょうか?
出口:ゆるやかなネットワークを組んで、犯罪を行う新興の集団です。暴力団は組織ありきですが、半グレは個人の集まりであるのが特徴。個人の目的のために組織をうまく使いながら犯罪を行います。
近年、暴力団構成員は減少している一方で、半グレメンバーは増えています。暴力団と違って構成員が明確になってはいないのですが、増えているのは確実です。お互いに名前も知らないままグループになって窃盗をしたり、特殊詐欺をしたりといった例がよくあります。
「うちの子、悪い仲間とつるんでいるかも」と心配なときはどうする?
小川:出口先生は、暴力団の離脱指導もされていたそうですね。そんな出口先生にお聞きしたいのですが、非行集団とまではいかないまでも我が子が悪いグループに入っているのでは?と思ったとき、どうすればいいのでしょうか。
いまの時代、いかにもなファッションで集団でたむろしているなんていうことはなく、「悪いグループ」と言ってもわかりにくいのだと思いますが、急に子どもの言葉が悪くなり、どうやら付き合う仲間が変わったようだと心配になる親御さんの声はよく聞きます。