ウクライナが奪還作戦実行で感じた「手応え」 「われわれに必要なのは助言ではない。弾薬だ」

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2023年7月31日、ザポロジエ州で歩兵戦闘車に乗るウクライナ兵(写真・ロイター=共同)

2023年6月初めの開始以来、難航していたウクライナの反攻作戦が8月半ばから一転、進展し始めた。それはなぜなのか。その舞台裏を検証し、今後の反攻作戦の行方を占ってみたい。

まず舞台裏を検証するうえで、反攻作戦の歯車が回り始める直前、ウクライナにとっての2023年7月末のどん底状況を振り返りたい。

アメリカ軍提案の作戦をウクライナが拒否

筆者は東洋経済オンラインで「アメリカの"弱腰"を懸念し始めたウクライナ」(2023年7月31日付)を書いた。この中で、反攻の膠着化を受けて、アメリカのバイデン政権がゼレンスキー政権に対し、戦争を凍結し停戦協議を行うよう求めてくるのではないかとの懸念がキーウに広がっていると報告した。当時、アメリカとの二人三脚を何とか維持するためにも、2023年8月が外交的にも軍事的にも正念場になると筆者はみていた。

2023年8月に入りゼレンスキー政権はある覚悟を決めた。膠着打開のため、アメリカ軍が提案してきたペンタゴン流作戦を、あえて拒否する道を選択したのだ。それよりもウクライナ軍が正しいと信じる自らの反攻作戦を続けて活路を見出すという「自らを貫く路線」を採用した。

なぜウクライナはこの時期、このような選択をしたのか。それは2023年8月中旬にウクライナ軍とアメリカはじめ北大西洋条約機構(NATO)側との間で、連続秘密交渉が控えていたからだ。

秋へと季節が変わる9月を前に、年内の戦いにどのような戦略で臨むのか。ウクライナとアメリカが立場のすり合わせをする、大きな節目となる交渉だ。最初の協議は2023年8月10日にオンライン形式で行われた。

アメリカ側からは軍制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長のほか、NATO欧州連合軍最高司令官を兼務するクリストファー・カボリ欧州軍司令官などが参加。さらにイギリスからもトニー・ラダキン国防参謀総長が参加した。ウクライナ軍からはザルジュヌイ参謀総長らが出席した。

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