「1本2000万円」サイの角を切る密猟者の残酷手口 邦人サファリガイドが取り組む保護活動の最前線

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今有効な密猟対策として、ほとんどの私営保護区や国立公園で行われているのが「除角作業」です。英語ではDehorning といい、言葉通り「サイの角を取り除く」という作業です。文字だけで見ると、「それじゃ、密猟者とやっていることは同じじゃない?」と感じてしまうかもしれません。

密猟者の場合、見つかってしまう前に、なるべく早くサイの角を取って逃げることしか考えていないため、サイの多くは角のためだけに殺されてしまいます。

しかし、獣医立ち会いのもと麻酔を打ち慎重に作業すれば、サイを傷つけることなく角を取り除くことができるのです。伝統薬として信じられているサイの角ですが、実際には人間の爪や髪と同じケラチンという物質でできていて、その効果は科学的に証明されていません。

人間が爪や髪を切っても痛くないのと同じように、サイも痛みを感じずに角を短くすることができるのです。角がなければ、密猟者の犯行動機もなくなるため、格段に密猟被害を抑えることに成功しています。

絶滅までの時間稼ぎとしての「除角作業」

今のところ、角がなくなったからといって、ライオンに襲われるといったリスクが高まるわけでもなく、サイはこれまで通り健康に暮らしています。しかし、サイのオスはメス獲得競争の際、角を使ってオス同士で戦います。そのため、より角の立派なオスがメスと交尾し、子孫を残していきます。除角作業によりどのサイにも角がない状況下では、長期的に見るとこうした自然繁殖の掟に影響を与えてしまう可能性も否定できません。

こうした懸念もあるため、除角作業はしないにこしたことはない活動ではありますが、次々とサイが殺されていっている厳しい現状では、絶滅までの時間稼ぎには大きな効果がある活動であるとも言えるのです。

サイの角だけを慎重に取り除く「除角作業」(写真:『私の職場はサバンナです!』より ©YukaonSafari)

除角作業に加え、密猟を取り締まるための地道なパトロール活動もとても大切です。現在クルーガー周辺エリアではパトロール体制改善のために、より多くの資金と人手がつぎ込まれ、密猟者と闘うために最新のテクノロジーが活用されるようになりました。セキュリティーがかなり強化されたことで、密猟被害は大幅に減少しました。

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しかし、油断は禁物です。2022年に入ってからの半年間ですでに259頭のサイが殺されています。クルーガーで密猟しづらくなった密猟者たちは、これまでターゲットとなっていなかった新たな州や別の保護区のサイを狙うようになりました。やはり需要が無くならない限り、根本的な解決には至らないのです。

また、密猟を横行させる要因となっている国際犯罪組織や汚職の存在、密猟者として雇われている現地住民の教育や雇用機会の改善など様々な社会問題の解決も求められています。将来、博物館でしかサイが見られないなんてことにならないように、サイや彼らの生息する生態系全体を守っていくための活動を続けていきたいです。

太田 ゆか 南アフリカ政府公認サファリガイド

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おおた ゆか

1995年、アメリカ・ロサンゼルス生まれ、神奈川県育ち。南アフリカ政府公認サファリガイド。立教大学観光学部在学中に、南アフリカのサファリガイド訓練学校に留学し、資格を取得。大学卒業後、2016年からガイドとして活動している。野生動物の保護活動にも取り組み、サバンナの魅力と現状を広く伝えようと、様々な情報や写真をSNSでも発信している。

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