「1本2000万円」サイの角を切る密猟者の残酷手口 邦人サファリガイドが取り組む保護活動の最前線
密猟者の多くは夜保護区に侵入し、サイを見つけると、銃で撃って動けないようにします。その後、斧やチェーンソーなどの道具をつかって、角を顔から切り取ります。サイは撃たれて即死することもあれば、中にはまだ生きているのに角と一緒に顔の一部まで切り取られ、ゆっくりととても苦痛な死を迎えなくてはならないサイもいます。私が暮らすクルーガーエリアはサイの密猟のメッカ(中心地)となっていて、夜銃声が聞こえるたびに「またサイが犠牲になったのか」と、心が暗くなったのを覚えています。
ある朝、私がサファリをしているエリアで、メスのシロサイが密猟にあったとの報告が入りました。そのメスにはまだ小さな赤ちゃんがいたので、どうなってしまったのか不安でいっぱいでした。密猟取り締まり隊が駆けつけた時には、赤ちゃんサイは母サイの死体の横で途方に暮れたように立ち尽くしていました。密猟者は角のために母サイを殺しましたが、幸いまだ小さな赤ちゃんには角が生えていなかったため、そのまま放置されていたのです。
この赤ちゃんサイは「オリビア」と名づけられ、野生動物リハビリセンターで人間がお世話することになりました。トラウマになるような事件があったにもかかわらず、オリビアはすくすくと元気に育ち、独り立ちできる大人のサイに無事成長してくれました。
密猟者の犠牲となったオリビア
そこで、オリビアは私たちの保護区のもといた野生の中に戻されることとなりました。自然界に戻っても、たくましく生き抜くオリビアの姿をサバンナで見かけるのは、いつも勇気をくれる嬉しい瞬間でした。しかし、その時間も長くは続きませんでした。保護区に戻った数年後、オリビアも密猟者の犠牲となり殺されてしまったのです。
この悲劇は、大量に起きているサイの密猟事件のたった一例にすぎません。私がサファリガイドになった2015年頃には、1日サファリに出かけたら必ず一度はサイに出会えるといっても過言ではないくらい、頻繁にサイを見かけました。しかし2022年現在、同じクルーガーエリアを走っていてもサイに出会うことはなかなかなく、1カ月間まったく見かけないこともあるくらいです。現地にいると、このようなサイの生息状況の変化をリアルに肌で感じます。
このままでは絶滅してしまうという危機感が高まり、南アフリカでは様々なサイの保護活動が行われています。
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