稲盛和夫さんがJAL再生で何よりも重んじたこと 「心」を変え、同じ思いを共有して起きた劇的変化

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従来の日本航空で経営の中枢を担っていたのは、いわゆるエリートの人たちでした。一流の大学は出たが、現場で汗をかいたことがほとんどない人たちが頭だけでプランを考え、”上意下達”によって会社を動かしてきたのです。

経営というものは、現場を知らずしてできるものではありません。そういう構造をまず変えるべく組織を大幅に改変し、現場で苦労してきた人が経営に携われるようにしました。

稲盛和夫さんが経営者人生の中で大切にしてきたのは、子どものころに親からいわれ、また学校で先生から教わったような教訓や道徳をベースにした考え方でした(撮影:今井康一)

従業員の心が変われば、会社は劇的に変わる

組織をそのように変えただけで、現場で働いている人たちはがぜんやる気を出し、いきいきと働いてくれるようになった。それぞれの持ち場で自分ができることを自らの意志で最大限行ってくれるようになったのです。自分が経営の一端を担っているのだという思いが、彼らの仕事に対する姿勢を劇的に変えていきました。

また私はしばしば現場を訪れては、そこで働く従業員に直接語りかける機会をもちました。日々の仕事への心がまえについてお話しするとともに、お客様に接するにあたって、「利他の心」をもって取り組んでほしいということをお願いしました。

とくに飛行機に搭乗してお客様と直接接する客室乗務員やパイロットの心のありようは、そのまま会社の行く末を担う大きな鍵を握っています。その対応がお客様の心に寄り添うものであれば、また乗ってみたいと思うでしょうし、いい加減なものであれば、お客様はどんどん離れていってしまうでしょう。それはダイレクトに会社の命運を左右します。

私は客室乗務員の人たちを前に、こんな話をしたものです。

「『あの飛行機にまた乗りたい』とお客様に思っていただく。そんな航空会社に生まれ変わるためにいちばん大切なのは、みなさんの『心』です。形ばかりのおもてなしではなく、そこには、お客様に対する感謝や親切、やさしさや思いやりがこもっていなくてはならない。それなくしては会社の再生はかないません」

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