実質賃金が回復するためには、約6年間はインフレ率が「低迷してくれないと困る」という皮肉な状況である。インフレ率が低迷しながらでも高い賃上げ率を継続することができるか、ないしは高いインフレ率をさらに上回る賃上げ率が実現するか。いずれもそう簡単なことではない。
むろん、時間がかかったとしても、家計が前向きな変化だと考えているのであれば問題はない。しかし、内閣府の消費動向調査によると、消費者態度指数は低迷している。
指数を構成する指標のうち、特に「暮らし向き」が低迷しており、実質賃金の目減りが影響している可能性が高い。
実際に、家計は消費を抑制しているようであり、総務省の家計調査によると実質消費支出は4〜6月期まで3四半期連続で減少し、6月は前年同月比マイナス4.2%と、まとまった幅のマイナスである。
前向きな消費行動どころか、コロナ後のペントアップ(繰越)需要もままならない状況と言える。
年金受給者は「賃上げ」に縁がない
過去30年間で年金の受給者数は増加傾向にある。給与所得者も微増だが、日本人の家計の所得に占める割合としては年金所得が増えている。
国税庁のデータによると、2010年代に給与所得者数は増加したが、共働き世帯の増加や高齢者の労働参加率の上昇の一巡により頭打ち感が強まっている。
一方、厚労省が公表する公的年金の実受給権者数(公的年金受給者数〈延べ人数〉から重複を除いたもの)も同様に足元ではおおむね横ばいで推移しているが、この約20年間でみると大きく増加した。また、国税庁と厚労省がそれぞれ公表する所得データを確認すると、金額ベースで給与所得は増えているが、年金所得も増加している。
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