やっぱり日本は「デフレ」に戻るのかもしれない 需給が締まって起きた「当たり前のインフレ」

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店舗の前を行き交う人々
アフターコロナの小売り需要はいつまで(写真・Bloomberg)

植田日銀総裁は5月19日、内外情勢調査会において総裁就任後初めての講演を行った。講演では、「現在はしっかりと金融緩和を続けていくことが必要」「拙速な政策転換を行うことで、ようやくみえてきた2%達成の『芽』を摘んでしまうことになった場合のコストはきわめて大きい」などと発言し、現在の金融緩和策を維持する姿勢を示した。

早期の政策修正から距離を置く姿勢はこれまでと同様であり、特にサプライズはなかった。もっとも、消費者物価指数(前年比)と需給ギャップの関係であるフィリップス曲線を用いた説明は、日銀ウォッチャーにとっては「デジャブ」だった。

植田総裁の内外情勢調査会における講演資料12ページより転載(出所・日本銀行)

このフィリップス曲線を用いた説明は、黒田東彦前総裁が就任後間もない2013年9月のきさらぎ会での講演において言及したことが有名である。

人々の期待を動かそうとした黒田前総裁

黒田総裁は、景気(≒需給ギャップ)の改善によってインフレ率が上昇するというフィリップス曲線上の動きではなく、曲線自体を上方にシフトさせることが必要であると説明した。例えば、錨(いかり)という言葉を用いて「現在の『錨』を断ち切り、2%の新しい『錨』まで持っていく政策」の必要性を訴えた。

その方法は「量的・質的金融緩和」によって「人々の期待に働きかける」というもので、筆者を含む市場参加者は困惑した。期待が重要であることは間違いないのだが、「中央銀行が期待を動かせるのか」という点については明確でないという理解が多かったと思われる。

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