「実質賃金4.1%減の衝撃」が意味する困難な現実 需要側の刺激策がなければ賃金は上がらない
かなり衝撃的なニュースだった。
厚生労働省は3月7日、2023年1月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上の事業所)で実質賃金が前年同月比4.1%減となったと発表した。
これは物価上昇を加味したものだ。つまり、名目(見た目)の賃金は多少なりとも上昇していても、それを上回る物価上昇であるため、“実質”的には賃金が下がっていることになる。
具体的には名目賃金は同0.8%上がったものの、消費者物価は同4.8%も上昇している(なお四捨五入の関係で差がちょうど▲4.1%にならない)。毎年1月は年始の特売対応などによって、相対的に賃金が高くないパートタイム労働者が多く雇われることから、全体の賃金は引き下げ方向に作用する。とはいえ、どんな理由にせよ、実質賃金が伸び悩んでいる事実には違いがない。
この実質賃金の減少率は、実に2014年に消費税の税率がそれまでの5%から8%へと上がった頃以来となる。私たちは、物価が高くなっているのに、実質的な豊かさは享受できていない。エネルギーや食糧などの価格が上がっているからだ。賃金の現金給与総額はずっとプラスで転じているものの、物価の上昇に対して賃金が追いついていない。
雇用調整助成金の存在
賃金はなぜ上昇しないのか。
もっとも、これまでずっとデフレといわれていた日本で、突然のようにインフレが生じたわけだ。賃金は各企業の水準を変えねばならない。だから賃金の伸びが追いついていないのは短期的にはしかたがない、ともいえるだろう。
ただしここで、雇用調整助成金の存在を指摘したい。この制度は、文字どおり、企業がやむなく従業員を自宅待機にするとき、休業手当負担を緩和するための助成金だ。
現時点では、コロナ禍前と比較して売上高が減少した企業に助成している(正確にはコロナ禍前のいずれかの同じ月と比べるか、過去1年のいずれかの同じ年で売り上げが10%減少していればいい)。ただ、これからは前年との比較で助成する仕組みに戻そうとしている。通常の運用に戻すわけだ。
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