「実質賃金4.1%減の衝撃」が意味する困難な現実 需要側の刺激策がなければ賃金は上がらない

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賃金
格差も広がっている(写真:NewStella/PIXTA)

つまり現状では、この雇用調整助成金があるため、失業率が本来の数字よりも改善して見える。現在、日本では2023年1月の完全失業率が2.4%と、きわめて低く見える。これは2020年2月以来の低水準になっている。さらに前月からも改善している。

ただ、これ以降は、雇用調整助成金の適用が旧来の基準に戻る。そのために、より積極的な財政政策で消費を喚起し、低失業率を維持させるしかない。

そして、日本人の賃金を上げるには、雇用調整助成金がなくても、より低い失業率を達成し「限界点」を超えるしかない。現時点で、中小企業の経営者と話していると、従業員はいまの賃金のままで働いてくれると考えているようだ。

もっと人手不足にならないと、経営者にとって賃金をさらに増やすインセンティブは持ちづらい。賃金を上げずに従業員を雇用し続けられるのであれば、賃金を上げないほうが経営者として経済合理的といえる。

なので、実質賃金を上げ、名目賃金をさらに上げるためには、需要側の刺激策が必要だろう。

中小企業は値上げの申請を!

そして、現場からの観点を述べよう。需要側の刺激がなされ、人手不足が深刻化したとする。そのとき、中小企業はただただ賃金を上げるだけではなく、自社の販売価格を上げて収益を向上させる必要がある。つまりは値上げだ。

中小企業が値上げし、適正な価格を請求する必要がある。極端な話、毎年10%ずつ物価と賃金を上げ続けないと、諸外国に負けてしまうのではないか。

そこで私はこの数年ばかり、中小企業と値上げのための対話を続けている。そこで理解したのは次の2つの問題点だ。

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