86歳のムーア博士が講演会で語ったこと

「ムーアの法則は限界が近づいている」

「ムーアの法則は自己充足的なところがあったとはいえ、業界基準になった。その目標を達成すべく皆が頑張った結果、法則が成立した」と、半導体業界に詳しいテックナリシス・リサーチのチーフアナリスト、ボブ・オドーネル氏は話す。半導体だけでなく、半導体製造装置から部材に至るまで半導体製造にかかわるすべての業界関係者が、ムーアの法則を基に海発計画を立ててきた。この法則についていけなければ、競争に負けてしまうからだ。

もっとも、ムーアの法則には何度も限界説が出ている。半導体製造工程はすでにナノテクノロジーの段階にあり、物理的な限界を迎えているとされる。

ムーア博士が描く未来予想図

これについて、ムーア博士は「(法則は)あと5年から10年はもつのではないか。でも、こうした指数関数的な伸びはいつか、乗り越えられずに止まるだろう」と話す。アリの背中に集積回路を乗せても気がつかないほどの微細化を進めてきた技術者たちに対して、「これを続けるには多くの良いエンジニアリングがいる。(半導体)産業が行き詰まらないよう期待している」と壇上から呼びかけた。

一方で「米国では基礎科学が衰えてきた」との懸念を示し、基礎研究へのさらなる投資の必要性を唱えた。

この日、イベントが開かれた会場には、インテルやイベントを共催したゴードン・アンド・ベティ・ムーア財団が支援するプロジェクトも展示されていた。58億ドルの寄付に基づく同財団は科学、環境保全、医療等のプロジェクトに対して年間 2600万ドル相当の助成金を出している。インテル社員によれば、「財団やインテルは簡単に成功できる研究やプロジェクトには画期的な未来はないと考えており、 成功しそうに無いものに投資する」そうだ。

イベントでムーア博士に直接、10年後の世界はどうなるか聞いてみた。答えは率直に「わからない」だった。

「インターネットの開発は私にとって驚きだ。(ネットによって)新しい機会のドアが開くことに気がつかなかったし、高速道路で自動運転車を見ることになるとも思わなかった」。現在は、コンピューターが人間の利便性を向上するためにどんなことをできるかを探る初期段階にあり、今後は「machine intelligence(人工知能)」が進化していく、と予想する。

インテルの本社があるシリコンバレーはその名の通り、かつては半導体メーカーが地域の主役だった。しかし、今ではアップルやグーグル、フェイスブックなど多様な企業が集まるハイテク都市となった。ムーアの法則はこれからも生き続けられるだろうか。あるいは、シリコンバレーが変遷していったように、新たな法則に変わっていくのだろうか。

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