森喜朗氏が「仕切り役」、安倍派・新体制移行の混乱 「五人衆」主導も後継争いで分裂加速も

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そもそも、同派の「仕切り役」とされる森氏は、2012年11月の衆院選に出馬せずに「政界引退」したが、その後も東京五輪組織委会長(途中辞任)を務めるなど中央政界への影響力を維持し、「安倍派の事実上のオーナー」(自民長老)とみられている。

森氏は岸田政権発足後、早い段階から岸田首相の政権運営での相談相手となり、「党・内閣人事での安倍派の扱いはすべて俺が決めた」と公言してきたことから、「今後も人事の窓口は森氏というのが自民党内の常識」(同)となりつつある。

新体制移行に不満を漏らす下村氏についても、「過去のあつれきから下村氏を毛嫌いする森氏が、塩谷氏に『下村外し』を進言した」(森氏周辺)との情報も飛び交っている。

このため、新体制移行を受けて8月20日に長野県・軽井沢町で開催された同派研修会では、参加議員の間では「会長不在での森氏主導に対する不満と不安が隠せなかった」(派若手)とされる。

首相らは「安倍派分裂」に期待し“高みの見物”

こうした安倍派の現状について、岸田首相や麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長ら党最高幹部は、「安倍派の混乱に『高みの見物』を決め込んでいる」(自民長老)のが実態だ。新体制移行後も「五人衆」の後継争いが続くことは確実とみられるだけに「安倍派が混乱していれば、人事で気を使う必要もない」(官邸筋)と高をくくっているからだ。

ここにきて、首相周辺からは「巨大派閥が空中分解すれば、長く続いた清和会支配も崩壊する」との声が漏れてくる。多くの他派閥幹部も「いずれ安倍派が分裂し、新たな派閥体制作りに向けての草刈り場になる」(麻生派)と期待も込めて状況を見守っている。

そうした中、今後、安倍派新体制で最大派閥の結束を維持、強化できるかどうか。現状をみる限り、自民党内でも「安倍派新体制の前途は極めて多難」(自民長老)との厳しい声が広がるばかりだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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