東日本大震災であらわ、自動車メーカーが直面したサプライチェーンのわな
しかしトヨタですら、オンラインで結ばれ、実態を正確に把握しているのは、せいぜい2次サプライヤーまで。それより先になると被災状況の把握すら難しい。さらにここ10年程度、リスク分散のため複数購買を推進してきたが、「2次、3次サプライヤーの段階では、素材や部品を同じところから仕入れているケースのあることがわかった」(佐々木副社長)。今回は特に塗料やゴム、化学薬品などの素材の調達が難しくなっており、その分だけ、影響を受けた部品点数が膨らんだ。
現在でも調達のボトルネックとなっているのが電子部品だ。自動車制御用マイコンで世界シェア約4割を占めるルネサスエレクトロニクス。その那珂工場(茨城県ひたちなか市)は、自動車メーカーなどから2500人規模の支援を受け、復旧を急ぐ。6月1日には生産を再開できる見通しだが、製品供給が本格化するのは8~9月ごろとみられ、依然として綱渡りの状況が続く。
今回ルネサスへ派遣されたトヨタの社員は「自分たちができたのは土木工事や物資運搬の手伝いぐらい。クリーンルームにはいっさい手をつけられなかった」と振り返る。車の電子化が進み、現状では1台当たり30~100個のマイコンが使われる。それでもその製造プロセスは、自動車メーカーにとってブラックボックス。JPモルガン証券の高橋耕平アナリストは「内製化を進めるかどうかも含めて、電子部品の調達は今後の大きな課題になる」と指摘する。
ラインを動かしてみないとわからない
通常1~6カ月単位の生産計画で動く自動車業界だが、現在部品メーカーに内示する生産計画は1週間単位で変わっている。11~12月に正常化といっても、今後どのような角度で生産量が上がっていくか、自動車メーカーですら把握できていない。
ある2次サプライヤーは4月上旬、購買と生産技術の担当者総出で取引先を訪問した。対象は取引先約190社のうち30~40社。担当者たちは一社一社、工場のラインを確認し、安定供給が可能かを確かめる。