東日本大震災であらわ、自動車メーカーが直面したサプライチェーンのわな

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5月11日、2011年3月期の決算を発表したトヨタ自動車。その席上、豊田章男社長は生産の回復が計画より前倒しで進んでいることを明らかにした。

震災による部品不足の影響を受け、トヨタの稼働率は現在5割程度にとどまる。だが、「6月には国内外で7割レベルの生産ができる」(豊田社長)。4月中旬の発表では、生産が7割レベルに戻るのは、国内で7月、海外では8月としていた。全面的な生産正常化のめどは11~12月から変えていないが、業界では「計画より1カ月程度は早まるのではないか」(アナリスト)との声が多い。

とはいえ、自動車の生産がこれほど長期間、自動車の生産がこれほど長期間、停滞するのは、異例中の異例だ。その原因は部品調達難にある。自動車の部品点数は2万~3万点に及ぶ。その一点でもなければ、車を造ることができない。

サプライヤー復旧へ 4300人が現地入り

震災後、自動車メーカーの国内工場は軒並み操業停止に追い込まれた。全工場で生産再開できたのは4月18日。震災後1カ月以上経ってからだ。その結果、3月の国内生産台数は、トヨタで前年同月比62・7%減と金融危機を上回る過去最大の落ち込みとなった。部品不足は海外工場へ波及しており、4~5月の生産台数はさらなる減少が懸念される。

この間、自動車メーカーは手をこまぬいていたわけではない。被災地には自動車部品メーカー(サプライヤー)が、およそ500社あるといわれる。今回主要な自動車メーカーは、延べ約4300人もの要員を現地へ派遣し、サプライヤーの復旧作業を急いだ。生産正常化に向けて、日本の得意とする“現場力”は大いに発揮されている。

それでもすべての部品をそろえることは難しい。トヨタの佐々木副社長は、「サプライチェーンはびっくりするほど複雑。今回それをあらためて感じた」と率直に語る。

自動車の供給網は自動車メーカーを頂点に、1次サプライヤーから地場の4次、5次サプライヤーまでピラミッド構造でつながっている。その強固な結び付き、在庫を極力持たないジャスト・イン・タイム方式は、日系自動車メーカーのまさに競争力の源泉だった。

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