どさくさに紛れ粗大ごみも「祭り」後の収集現場 いったい誰が「キレイ」に片づけているのか?

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祭りの後のごみ出し状況を確認したところ、有料ごみ処理券を貼付せずに排出しているごみも複数見受けられた。祭り中は収集車が商店街の中に入れないため、臨時集積所は商店街の中に居住する住民のごみの排出場所ともなっている。

そのため処理券が貼っていないごみは居住者が排出した可能性があるが、明らかに祭りの飲食店から出されたごみと判定できるものに処理券が貼付されていなかった。

中には「有料ごみ処理券」が貼付されていないごみも(筆者撮影)

また、個人の粗大ごみを便乗して排出するケースもある。知人の清掃職員の方によると、ひどい時にはテレビや冷蔵庫が排出されていたこともあったという。

杉並清掃事務所によると、今年度はビデオデッキが便乗ごみとして排出されていたとのことである。非日常の祭りのどさくさに紛れて無茶苦茶なことをする人々がいるのは非常に残念である。

祭りにおけるごみの分別排出の必要性

祭りの後のごみ収集・処理においてポイントとなるのは、ごみがしっかりと分別されて排出されるかどうかである。

民間会社であろうが地方自治体であろうが、通常のごみ収集に見合うだけの人員体制で業務を行っているため、祭りごみの業務が追加で加わってくると、それを担うための十分な人員体制が構築できず、きめ細かな対応をするのは難しい。

大規模な祭りで一度に大量のごみが可燃ごみ・不燃ごみ・資源と一緒くたに混ざって排出されると、収集作業で作業員が不分別のごみを目にする限りは取り除けても、現実的には十分な対応ができないまま運搬・処理を進めていかざるを得ない。また、仮にするにしても場所的な制約もあり難しい。

よって、可燃ごみの中にペットボトルや瓶・缶が入れられていても、すべてを取り除くことは不可能であり、可燃・不燃・資源が混ざったまま清掃工場に搬入されているのが現実だ。

祭りのごみ収集についての実地調査や多くの関係者の方々からお話をお伺いしていくうちに、筆者は「祭り見物に行く人のごみ排出への協力」が必要であると痛感した。

まず、祭り見物に行く際には、極力ごみを出さない、会場に飲食物を持ち込む際には、持ち帰れるよう準備しておくようにする。一人ひとりのごみはわずかでも、多くの人々が排出するとかなりの量となり、それを誰かが収集してまわることになる。祭り会場で飲食できごみをその場で排出できるならば、分別ルールに従ってしっかりと排出することが必要だ。

ここ数年はコロナウイルスの蔓延防止で祭りが中止となっていたため、久々の祭りの開催は私たちをいっそう解放的にして平常心を失わせる。

しかし華やかな祭りの裏では、実に多くの人々がごみの収集・運搬、処理・処分に裏方として携わって汗を流してくれている。中にはボランティアで活動してくれている人もいる。これらの人々の存在に思考を巡らせながら華やかな祭りを見物して楽しい時間を過ごすのが必要ではないだろうか。

近年サッカー、野球、ラグビーなどの世界大会において、日本人観客がスタンドに落ちているごみ拾いをしていることが報道されていた。このようなムーブメントが祭りや花火大会でも起こればいいと願っている。

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藤井 誠一郎 立教大学コミュニティ福祉学部准教授

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ふじい せいいちろう / Seiichiro Fujii

1970年生まれ。同志社大学大学院総合政策科学研究科博士後期課程修了。博士(政策科学)。同志社大学総合政策科学研究科嘱託講師、大東文化大学法学部准教授などを経て現職。専門は地方自治、行政学、行政苦情救済。

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