今年の暑さは異常だ。これは今始まったことではなく、今世紀になってから認識されていた。だが自衛隊は暑さや、熱中症に対して無策に近いといってよい(自衛隊装甲車「エアコン装備が後れすぎ」の面妖)。実際の戦争になったら熱中症で倒れる隊員が多数発生してもおかしくはない。
まず問題は陸上自衛隊の装甲車両だ。鉄の塊である装甲車両は熱を吸収しやすいので車内の気温は極めて高くなる。装甲車の上で目玉焼きが焼けるというのも比喩ではない。しかも防御のために窓などは小さく、少ないので内部の換気は悪い。
特に問題なのが生物兵器や化学兵器が使用されるNBC(核・生物・化学)環境下だ。その場合装甲車両は車体を密閉し、内部の気圧を上げて外気の侵入を防がなければならない。外気はフィルターを通して取り入れる。夏場にクーラーなしの装甲車では30分も持たないだろう。陸自は夏季におけるNBC環境下の戦闘は不可能ということだ。
新型戦車にもエアコン装備はなし
新型の10式戦車にしても乗員用エアコンは装備されていない。技術研究本部(現・装備庁)も陸幕も要求仕様に入れていなかった。だが機甲科OBらの「これではあんまりだ」という声もあって、開発した三菱重工業が機器冷却用のエアコンの出力を多少高めて、乗員が多少「おこぼれ」をあずかれるようなっている。だが本格的に車内を冷却できるわけではない。旧型の90式戦車、74式戦車にもエアコンは当然装備されていない。
2016年に採用された16式機動戦闘車にもエアコンは装備されていなかったが、財務省からの強い要望によって本年度から調達される車両はエアコンが装備されるようになった。既存の16式にも順次エアコン搭載の改修がなされるという。だが本年度採用された最新型の装甲ドーザーにもエアコンは装備されていない。
陸自の装甲車両のほとんどにはエアコンは装備されていないので、夏場のNBC環境下での戦場では戦えない。既存の装甲車を改修してエアコンを搭載する計画は、16式以外は存在しない。
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