「混雑した空港だろうと、その他、混雑したどんな場所だろうと、私はどこにいても、そんなときにさえも、呼吸を通して意識の中に入り、静寂への道を見つけることができます」と言い、「リズミカルな呼吸をする習慣を身につければ、それが長期的には、万能薬になります」とつけ加えた。
呼吸の「スイング」の質は、診断であると同時に、治療薬でもあるのだ。
この呼吸の「スイング」は、数秒ごとに起こる。そして、人はどんな瞬間にもその中に深く入り込めれば、拡張的な静寂に出合うことができる。
導師シャブダは、人は呼吸にせめて少しでも注意を払うべきだと考えている。
1日に3回だけ呼吸に集中する
1999年、スティーヴン・デベリーには静寂のための時間がなかった。呼吸について考える時間さえなかった。「とにかく忙し過ぎて。それに、自分はとても重要な人間だから。CEOみたいな人間なので」と言って、自分を思い切り笑い飛ばした。
人類学の教育を受けたスティーヴンは、父親で、エリート運動選手で、テクノロジーの分野への社会的インパクト投資の先駆者だ。
しばらく前、『エボニー』誌と、『ザ・ルート』誌/『ワシントン・ポスト』紙が選んだアメリカの有力なアフリカ系アメリカ人100傑に選ばれている。スティーヴンは、当時も今と同じで、忙しく、仕事に没頭している重要人物だった。
1999年に厳しいスケジュールをこなしているとき、スティーヴンはヨガ・インストラクターもしている重役補佐と仕事をしたことがあった。彼女がやんわりと忠告してくれたときのことを、こう振り返る。
「彼女はこんな調子でした。『いいわ、お偉いさん。こんな応急措置(ハック)がぴったりね。1日を通して、思い出せたときにはいつも、3回呼吸するだけ。どっちみち、息はしているんだから。でも、注意を払うことが肝心』と、そこを強調しました。『3回だけ。それぐらいの時間はあるでしょう? いくら忙しいあなたでも』と」