この「騒音」が、私たちの意識を奪う。手つかずの注意力を植民地化する。目の前のことに集中したり、自分の心の衝動をうまく処理したり、空白――静寂のための空白――に気づいたり、それを正しく認識したり、維持したりするのを難しくする。
高度な神経画像テクノロジーの時代にあってさえ、人類全体の内部騒音のレベルを定量的に測定するのは難しい。それでも、注意散漫、ストレスと不安のレベルの高まり、意識を集中させづらいという自己報告など、代替の基準を通して、問題の証拠を目にすることが可能だ。
不安を感じている現代人
学問の世界に身を置く心理学者や精神医学者や神経科学者を対象とした私たちの面接では、彼らが内部騒音のレベルの代替指標として「不安」について語るのをしばしば耳にした。不安にはさまざまな定義があるものの、たいていは恐れや不確かさという要素だけではなく、内部のおしゃべりという要素も含んでいる。
アメリカの1000人の成人を対象とした2018年のアメリカ心理学会の調査では、39パーセントの人が前の年よりも大きな不安を、さらに39パーセントが前の年と同じだけの不安を、それぞれ感じていると回答した。つまり、合計すれば成人人口の4分の3以上が少なくともある程度の不安を報告したことになる。
しかもこれは、新型コロナ以前の話だ。パンデミックが起こってから中国とイギリスで行われた調査は、両国民のメンタルヘルス(精神保健)の急速な悪化を示している。
2020年4月のロックダウン(都市封鎖)のときに行われたアメリカの調査では、成人回答者の13.6パーセントが「重大な精神的苦痛」を報告している。これは2018年の3.5倍だ。