永遠に口にされる不平というものがあるとしたら、それはやかましさについてのものかもしれない。
それでもなお、今は既知の歴史のどの時代とも何かが違う。昨今はやかましいだけではない。精神的な刺激がかつてないほど蔓延している。
あるレベルでは、それは耳に聞こえる、文字どおりの「聴覚騒音」だ。新型コロナ対策の隔離のおかげで、耳障りな音が一時的に収まったものの、現代生活の軌道は変えられそうにない。
通りにはより多くの車が走り、空にはより多くの飛行機が飛び、より多くの機器が唸り、より多くのデバイスがビーッとかピーッとか音を立てる。公共空間や間仕切りのないオープンプランのオフィスには、前よりやかましいテレビやスピーカーがいっそう多くの場所にある。
ヨーロッパ全土で、人口のおよそ65パーセントに当たる推定4億5000万人が、世界保健機関が健康に有害と見なす騒音レベルで暮らしている。
ますますうるさくなるサイレンの音
これは測定可能な事実だ。世の中はますますやかましくなっている。緊急車両は周りの騒音に負けない音量が必要なので、サイレンの音量は、環境全般のやかましさの有効な指標になる。
1912年の消防車のサイレンが約3.35メートルの距離で最大96デシベルだったのに対して、1974年には同じ距離で114デシベルにまで達したことを、作曲家で環境保護主義者のR・マリー・シェーファーは突き止めた。
ジャーナリストのビアンカ・ボスカーは、現代の消防車のサイレンはさらにやかましく、約3.05メートルの距離で123デシベルであることを、2019年に報告している。
これはたいした増加には思えないかもしれないが、考えてほしい。デシベルは対数スケールなので、90デシベルは実際には80デシベルの10倍の音圧を持っており、私たちの耳にはおよそ2倍大きく聞こえる。