切れ痔は20~40代の女性に多い。排便時に鋭い痛みや出血などが見られるのが特徴だ。
「主な原因は便秘で、硬くなった便が肛門の上皮に傷をつけるために生じます。したがって切れ痔は便秘がちな若い女性に多いのですが、それだけでなく、生理中に下痢になる女性もリスクがあります。下痢の刺激によって起こる粘膜の炎症でも切れ痔になるからです」(平田医師)
一方、生活習慣の改善だけでなく、外科治療も必要になるのが、あな痔。がん化する可能性があるため、100%手術が必要になる。
あな痔は排便時に強くいきみがちな、筋力のある男性に多い傾向がある。とくに、“お酒をよく飲み、下痢をしがちな男性”が勢いよく排便することで、発症しやすい。
あな痔の前段階に肛門周囲膿瘍(のうよう)がある。これは、肛門の歯状線にある小さい穴から細菌が入り込んで肛門腺が化膿し、肛門周囲の皮膚に炎症が広がった状態だ。これが進行して、肛門腺からおしりの皮膚に向かって膿の通り道ができる。つまり、あな痔だ。
肛門周囲膿瘍は痛みが強く、発熱やだるさなどの症状を伴うことがある。
「肛門周囲膿瘍の段階で患部を切開して膿を出せば、症状は治まりますが、治療をせずに放置しておくと、あな痔に進行してしまいます。基本的にあな痔は男性に見られますが、男性と同じようなライフスタイルの女性も多くなったため、最近は女性にも増えています」(平田医師)
念のため大腸内視鏡検査を
では、痔らしき症状があった場合、生活習慣の改善をすれば、病院に行かなくてもいいのかというと、それはちょっと違う。
おしりからの出血や血便が見られた場合、その原因が痔ではなく、大腸がんという場合もあるからだ。大腸がんも痔も症状だけでは判別ができず、大腸内視鏡検査で詳しく観察してみないとわからない。
平田医院でも、出血や血便の症状が見られた場合には、がんを除外するために早めに大腸内視鏡検査を行っている。大腸がんの疑いがなくなれば、安心して痔の治療に専念できる。
「痔だと思っていて調べたら大腸がんだった、という患者さんは、実際にいます。度重なる出血や血便などの症状が見られた場合は、早めに肛門科を受診したほうがいいでしょう」(平田医師)
(関連記事:【大腸内視鏡】痛くない受け方と病院選びのコツ)
ちなみに、肛門にもがんができるが、これはHPV(ヒトパピローマウイルス)感染によるものがほとんどのため、あまり心配はいらないそうだ。
痔で病院(肛門科)に行く目安については、平田医師はこう助言する。
「まず、おしりからの出血が1週間続く、月に4~5日は便に血がつく、おしりが腫れて痛む、排便時に痛むなどの症状を繰り返す、というのは、やはり普通の状態ではありません。おしりの症状で日常生活に支障が出ている場合も、肛門科を早めに受診しましょう」(平田医師)
前述したように、平田医院では初診から3カ月間は生活習慣の改善に充てる。この期間を平田医師は「生活改善の予備校」と呼んでいる。その心構えとして説くのは、治療を自分ごととしてとらえ、「自分の体からのメッセージをよく聞くこと」。
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