つまり、痔は糖尿病や肥満、高血圧などの生活習慣病と同じで、長らく続けてきた生活習慣が要因というのだ。その要因を具体的に挙げると、肉体疲労やストレス、過度な飲酒、長時間座りっぱなしの姿勢、下痢や便秘、冷え、運動不足、食生活の乱れなどさまざま。
こうした要因を取り除くことで、「痔は手術をしなくても治る」というわけだ。
「当院では、受診した痔の患者さんすべてに対し、まずは生活習慣改善の指導をします。3カ月ほど様子を見てから手術をするか決めますが、その間にほとんどの方の痔は治ってしまいます」(平田医師)
痔には大きく分けて、いぼ痔(痔核)、切れ痔(裂肛)、あな痔(痔瘻:じろう)がある。
いぼ痔は肛門周辺にいぼができた状態、切れ痔は肛門付近の皮膚が裂けてしまった状態だ。あな痔は肛門の縁から約1〜2センチのところにある歯状線(しじょうせん)にある小さな穴から通じる肛門腺に膿(うみ)がたまり、おしりの皮膚から膿がでてくる状態を指す。
このなかで生活習慣の改善でよくなるのは、いぼ痔と切れ痔だ。
運動不足で便秘がちの人は要注意
「肛門には、便やガスが漏れないように筋繊維や動脈、静脈が網の目のように集まっているクッション組織があります。いぼ痔は、このクッションを支える組織が弱くなったり、クッションが大きくなったりして、いぼになったもの。便秘時の強いいきみが原因となりやすく、運動不足で便秘がちの人に比較的多いです」(平田医師)
いぼ痔はさらに内痔核と外痔核に分かれる。内痔核は、歯状線より奥(腸側)にできる。歯状線というのは直腸の粘膜と肛門の皮膚の境界線だ。この歯状線より肛門側の皮膚にできるいぼ痔は外痔核となる。
「内痔核のできる直腸側の粘膜は自律神経が支配している部分なので痛みを感じませんが、便がいぼにこすれるため出血が見られます。また、排便時にいぼが肛門の外に飛び出すこともあります。たいていは排便が終わると自然に戻りますが、進行すると、いぼを指で押し込んでもなかなか戻らず、脱出したままの状態になります」(平田医師)
一方、外痔核は皮膚にできるので、硬いイスに長く座っているなどでは腫れて痛むケースがあり、また肛門の出口にいぼが出てくるケースもある。
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