【痔】生活改善で治る人と手術が必要な人の違い 放置はダメ!早く治療するほどよくなりやすい

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初診時には痔の詳しい病名を紙に書いて患者に渡し、患者自身が自分の痔への理解を深めることからスタートする。3カ月間は2週間ごとに受診をして、治り具合を確認する。炎症がなかなか落ち着かなかったり、ぶり返したりした場合は、患者に生活を振り返ってもらい、その原因を一緒に考察するという。

「たとえば、職場の上司との関係性、仕事の忙しさ、女性なら生理中など、その悪化要因がわかれば、あとはその状況やストレスにどう対処していくかを考えます。女性の場合は生理中にとくに痛みやだるさ、眠気などが生じやすい。生理中は『仕事を1割減らす』『1時間早く寝る』などで体調の悪化や炎症を予防する。よりよい状態に整えることが大切です」(平田医師)

傷が浅い軽度の切れ痔は、患部を清潔にして炎症を抑える軟膏を塗りながら、生活習慣を整えて便秘や下痢を治していく。いきまずに軟らかい便をするりと出せるようになるだけで、症状は速やかに改善する。

手術が必要なケースとは?

ただし、やはりすべての痔で手術が不要というわけではない。

あな痔のほかにも、いぼが脱出して戻らない内痔核でかつ患者が手術を望む場合や、切れ痔で生活改善しても症状に変化が見られない場合、繰り返す切れ痔によって皮膚が引きつれて肛門狭窄(きょうさく)を起こした場合も手術することがある。それでもその割合は1割程度だ。

平田肛門科医院が実施したアンケート調査によると、痔の症状で病院に受診するまでに平均7年かかっているという。診察でおしりを出すという恥ずかしさ、「手術になるのでは」という不安や恐怖は、多くの痔の患者の足を病院から遠ざけてしまっている。

「痔は早く治療するほど治りやすい。もっと早く来てくれればよかったのに、と思うことはよくありますね」と平田医師は残念に思うそうだ。

「病院に行きたくても行きにくい」。そんな患者心理に対して、受診しやすいようにさまざまな工夫や配慮をしている肛門科も昨今は増えている。どのような病院を選ぶといいのだろうか。平田医師が勧めるのは以下のような病院だという。

最後に、市販薬を使うときの注意点について平田医師に聞いた。

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「痔の市販薬のなかにはステロイド成分が入っているものもあり、作用が強い。腫れや痛みに即効性はありますが、長期的に使うと粘膜が薄くなるなどの副作用があり、大腸がんなどの重篤な疾患の見逃し要因にもなります。連続で使っても2週間までにして、痛みやかゆみ、腫れ、出血などの症状が続くなら病院を受診しましょう」

(取材・文/石川美香子)

平田肛門科医院院長
平田雅彦医師

日本大腸肛門病学会肛門領域指導医。「手術をしないで治す」を信条とする肛門科専門医。1981年に筑波大学医学専門学群卒業後、慶應義塾大学医学部外科学教室に入局。1985年に社会保険中央総合病院大腸肛門病センターに入り、大腸肛門病の専門医となる。現在は、1935年開院の平田肛門科医院の3代目院長。ストレスマネジメント、食事指導、排便イメージトレーニングなど心身両面の生活指導を実施。本来持つ自然治癒力を最大限に引き出しながら、延べ40万人以上の患者を改善に導く。
東洋経済オンライン医療取材チーム 記者・ライター

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とうようけいざいおんらいんいりょうちーむ / TKO Iryou-Team

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