気仙沼市本吉地区で集団移転に関する住民説明会、「歓迎」の一方、住居新築や雇用確保など難関山積
小泉中に避難している住民が住む地域は、本吉地区内で津波による被害が最も大きい。約170世帯あった住宅のほとんどが津波で流され、5月1日時点でも200人が小泉中で避難生活を余儀なくされている。
それだけに参加した住民からも、「集団移転の話はありがたい」(山内義夫さん=80)という意見が多かった。ただ、移転が困難を伴うことも確かだ。
「家族を亡くしたうえ、自宅や仕事も失った人ばかり。利子は援助してもらえたとしても、新たに家を建てるためのおカネを持たない人も多い」と山内さんは語る。
■津波でほとんどの家が流された(気仙沼市本吉地区小泉)
気仙沼市職員で避難所の世話役の高橋典雄さん(57)は、「候補地の選定や新しい土地での雇用確保の手だてなど具体的な内容はこれから詰めることになる。ただし、どれも難しい問題が多い」と指摘する。
住民が取り残されることなく移転するためには、新たに住宅を建設する力のない人には公営住宅を準備するなど、きめ細かい手だてが必要になる。過去の自然災害とは被害がけた違いに大きいがゆえに、長期にわたる住民の闘いが続く。
■壊滅的被害を受けたJR気仙沼線
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(岡田 広行 =東洋経済オンライン)国の事業の説明会が、東日本大震災被災地の各地で始まっている。
気仙沼市本吉地区の小泉中学校では4月30日夕、同説明会が開催され、津波で家を失った約200人の住民が参加。気仙沼市都市計画課の職員から、事業について説明を受けた。
市が説明した「防災集団移転促進事業」は、2000年3月の有珠山噴火や04年10月の新潟県中越地震などに際して、住居の移転で事業が実施された。
■気仙沼市立小泉中で開かれた住民集団移転説明会(4月30日)
■被災住民に説明する気仙沼市の佐藤清隆・都市計画課長
この事業は、市町村が事業計画を策定したうえで国が4分の3を補助するというもので、移転促進区域の住民の移転に際して住宅団地の整備などを進めていく。住民は土地購入や住宅建設で金融機関から借り入れをする際に、借入金利子相当額の補助を受ける。また、移転とともに新たに必要となる共同作業所や加工場、倉庫などの建設についても国が補助する。
一方、従来住んでいた地域では新たに住宅を建てることができなくなる。代わりにすべての宅地や農地を買い取ってもらう。