やっぱまずい!「100円焼き鳥」食べてみた おいしさを決める「2つの鮮度」とは?
河岸:テナント形式B店の焼き鳥は、ホームページに書いてあるように、「国内産」だね。国内の工場で生肉を切って串に刺して、それをチルド(凍結寸前)の状態でスーパーまで運んで焼いている。「熟練のスタッフが焼く」のを売りにしているみたいだけど、私に言わせればそこに大きな問題がある。
N君:どこがおかしいんですか?
河岸:前回も解説したように、焼き鳥は「鮮度」が命で、その鮮度には2つあるの。
「絞めてから」と「串に刺してから」の時間が勝負
N君:ひとつは「鶏肉そのものの鮮度」ですよね。前回の話では、鶏肉は「絞めたあと12時間後から翌日くらいがいちばんおいしい」ということでした。
河岸:そのとおり。それに加えて、おいしさを決めるもうひとつの鮮度というのは「切って串に刺してからの時間」なの。切ってから時間を置くと、「ドリップ」といって肉汁が出てしまうから。刺し身も肉も、この「ドリップ」にうまみが詰まっている。
N君:ん? それも「肉そのものの鮮度」ってことじゃないんですか?
河岸:いや、同じ時間に絞めた同じ鮮度の鶏肉でも、肉の塊(かたまり)で保管して焼く直前に切って串に刺したものと、早くに小さく切って串に刺して放置したものでは、味がまったく違う。
N君:つまり、「肉の塊から小分けに切った時間」が大事ってことですか。
河岸:そのとおり。刺し身も一緒で、「柵」(塊のこと)の状態で保管するほうが、ひと口サイズに切ってしまうより、鮮度が保てるからね。
N君:じゃあ、店でショーケースに、串に刺した状態で山積みしているのは、本当のおいしさを損ねているわけですね。
河岸:本音をいえば、そうだよね。ちゃんとした店は、高級店でも安い店でも、焼く直前に切って串に刺すから。店がオープンする直前に下ごしらえしたものならまだしも、前回の「人気焼き鳥チェーン店」みたいに、串に刺してから3日も経っているような焼き鳥は、どんなにいい比内地鶏でも、おいしさが全部出てスカスカになってしまう。
N君:なるほど。自分がよく行く焼き鳥店で「直前に肉の塊から切って串に刺しているか」「串に刺して長時間、放置していないか」を見るといいわけですね。
河岸:それがひとつのチェックポイントだよね。寿司屋も同じで、ネタを「注文を受けたあとに柵(塊)から切るか」「あらかじめ切り置きしているか」で店の良しあしは見抜ける。
N君:テナント形式B店のように、仮にスーパーの売り場で焼いていても、生肉を切って串に刺して運んでいる間に「ドリップ」が出てしまうわけですね。
河岸:そう。本来は店で切って串に刺して、すぐに焼くべき。「熟練のスタッフ」だというのなら、そんなこと十分できるでしょう。
N君:なるほど。でも、この惣菜店の焼き鳥ってけっこう人気があるんだけどなぁ。
河岸:みんな本当においしい焼き鳥を食べてないんじゃないのかな。だいたい、こうやって市販の焼き鳥を買って、家で温め直したりしたら、2度加熱でしょう。2度加熱なんかしたら水分が飛んでしまって、おいしいものが食べられるわけがない。
N君:なるほど。店頭で焼いているのを買って、温かいうちに食べるなら、まだマシですか?
河岸:まだマシ。焼きたてをその場で食べるとかね。
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