デイサービスなのに「介護しない」利用者の本音 やりたいことに耳を傾け実現のサポートをする

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池田さんが会社を設立したのは、2013年9月のことだ。

長年、介護士やケアマネジャーとして働いてきた池田さん。高齢者と触れ合う介護施設の現場はやりがいがあったが、次第に自分のある言動に違和感を持つようになった。

それは、利用者に何か呼び止められても、次々と業務に追われて、「ちょっと待って」と言わざるを得ない状況が続いてしまったことだ。

「利用者さんは勇気を振りしぼって声をかけてくれたかもしれないのに……。もし、その一言が最後に交わす言葉だったとしたら、『ちょっと待って』なんて言えないなと」

施設主導で一日の予定が進んでいく中で、利用者一人ひとりの思いに耳を傾けることは難しい。それに、外出の機会が少なく、施設内で一日中あまり動かずに過ごすことも引っかかっていた。

人生最期の時間を過ごすかもしれない、だからこそ

人生の最期の時間を過ごすかもしれない大切な介護施設だからこそ、もっと一人ひとりが自由にやりたいことが叶えられる環境がつくれないか? そう考えた池田さんは起業を決意。

地元・青森で開催された「あおもり起業家グランプリ ビジネスプランコンテスト」に出場した。そこで見事、最優秀賞を受賞し、「まる」設立の大きな足がかりとなった。

同施設では、「趣味活動」「健康と美」「お仕事」の3つのキーワードをもとに、利用者の希望を取り入れながら、1カ月の活動行事を設定する。そのほか、「生活支援」として、毎日近隣のスーパーなどへの買い物同行の時間を設け、利用者の食生活のサポートにも力を入れている。

2019年9月には、要介護の高齢者と障がい者がともに働く、お弁当屋兼デイサービスの「無添加お弁当二重まる一番町」をオープン。翌年12月には、健康と美容に特化した半日型のデイサービス「ウエルネスサロン キャトルフィユ」も開設した。

同社が開発した在宅高齢者向けのアプリ「Everyday」。Zoomでの「仮想デイ」を実施するほか、Apple Watchでの24時間見守りを行う(写真:池田介護研究所提供)

また、2022年には自宅からヨガなどさまざまなレクに参加できる「仮想デイサービス」と、体温や心拍数などのバイタルを把握できる「24時間見守りサービス」の機能を備えたアプリを開発。デイ利用者や地域の高齢者を遠隔でサポートする新事業をスタートさせた。

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