10年で売上2倍!「漢方薬」がいま受け入れられる訳 医薬品不足や健康志向が追い風、一方で誤解も

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漢方薬については、コロナ禍に加えて、2017年より「セルフメディケーション税制」がスタートしたことや、近年の健康志向も相まって、処方薬のみならず、処方箋を必要としない一般用医薬品の漢方薬の売り上げもこの10年で倍増している(日本漢方生薬製剤協会『漢方製剤等の生産動態』より)。

このように漢方薬への需要は高まっているものの、西洋医学的な治療とどのように使い分けられているのか、どのような場面で使うと効果的かといった点は、医療者の間であっても実は十分に知られていない。

また、一般の方では「味が苦い」「効きにくい」などのイメージも先行しがちである。

そもそも漢方って?

漢方という名前は、16世紀に入ってきた蘭方に対する命名で、古代中国由来の医学を指す。漢方は、数千年の歴史を持つ中国の伝統医学で、日本には遣隋使や遣唐使により伝えられ、日本独自の発展を遂げた。

そのため、現在の日本の漢方(和漢ともいわれる)は、現代中国における伝統医学である中医学とは考え方や、処方・用語の使い方が異なる。

漢方薬はさまざまな効能をもつ生薬(しょうやく)の組み合わせから成る。生薬とは、植物の葉、茎、根などや鉱物、動物のなかで薬効があるとされる一部分を加工したものだ。

現在、日本では健康保険で使える医療用の漢方薬は148種類ある。

ドラッグストアや薬局で市販されている一般用の漢方薬の多くは、医療用漢方薬と構成する生薬の種類は同じだが、安全性を考慮して成分量が3分の2程度に減量されている(最近は減量されていない、満量処方も出てきている)。

漢方薬をとりあえず試したい場合は市販の漢方薬でも構わないが、自分に合った漢方薬を選ぶためには、漢方専門医がいる漢方外来への受診を勧める。なお、漢方専門医は日本東洋医学会や日本臨床漢方医会のホームページで検索できる。

■日本東洋医学会のホームページはこちら
■日本臨床漢方医会のホームページはこちら

続いて、漢方医学と西洋医学の考え方の違いについて紹介する。

病気の 原因を明らかにして治療するのが得意な西洋医学では、治療のターゲット(病名)が明確な場合に効果を発揮する。だが、明確な病名がつかない場合、西洋医学的な治療ではあまり良い選択肢を提供できないことが多い。

おそらく読者の皆さんの中にも、体の不調から病院を受診したものの、検査に異常がないという理由で「何でもない」と言われた方もいらっしゃると思うが、それは西洋医学的な視点では仕方ないことなのである。

これに対して漢方は、病気の原因がはっきりしないなかで、症状を癒やすことができる漢方薬を試行錯誤で見つけてきた歴史から、病名のつかないような症状に対応することが得意である。

例えば「冷え」に関していうと、西洋医学では対応が難しいが、漢方では四肢末端型、全身型、寒熱錯雑(かんねつさくざつ)といったタイプに分類し、熱の産生を促す附子(ぶし)や、乾姜(かんきょう)といった生薬を含む、多数の漢方薬が準備されている。

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