10年で売上2倍!「漢方薬」がいま受け入れられる訳 医薬品不足や健康志向が追い風、一方で誤解も
急性上気道炎(いわゆる風邪症状)に伴う発熱では、一般に解熱鎮痛剤が使用されるが、漢方では「証(病人の状態や治療の指標となるもの)」という漢方的なものさしに合わせて、麻黄湯(まおうとう)、葛根湯(かっこんとう)、桂枝湯(けいしとう)、麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)、香蘇散(こうそさん)などで、きめ細かに対応していく。
最近では、新型コロナウイルス感染症の後遺症「Long COVID」の症状改善にも漢方薬が用いられていている。
また漢方薬は、臓器別を超えて全人的に対応する(心身一如:しんしんいちにょ と言う)ことが可能である。
高齢者はしばしば複数の身体の不調に対して、複数の診療科から多数の薬剤を処方されるが、漢方的な視点で診療することで薬の種類を減らし、高齢者の薬剤費の削減につながる例も報告されている。
例えば、神経障害を伴う糖尿病、前立腺肥大症、腰痛症を有する高齢男性を西洋医学的に治療しようとすると、糖尿病は内科、前立腺肥大は泌尿器科、腰痛症は整形外科を受診し、各科から多数の処方を受ける。
一方、漢方では腰痛、排尿困難、全身倦怠感、冷え、目のかすみは腎虚(じんきょ)と捉え、八味地黄丸(はちみじおうがん)1種類で対応し、薬の数を減らすことができる。
「医食同源」と「未病」を重視
既に症状のある患者に対してだけでなく、漢方では「未病」といって、身体に病的な症状が表れる前に微妙な体調の変化を察知し、早期に対策を講じることも大切にする。「医食同源」として食養生を重視し、漢方の問診では、体を冷やしてしまう砂糖を摂りすぎていないかなど、食生活も確認する。
2022年に株式会社アイスタットが実施したアンケート調査によると、漢方薬のイメージでは、「即効性がなさそう」が34.0%で最も多かった。
だが、これは必ずしも正しくない。風邪などの急性疾患に対する漢方薬は、数時間から数日以内の効果発現が期待される。一方で慢性経過の症状を改善するには時間がかかり、目安として2~4週間で何らかの変化が見られるようになる。
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