回転寿司から「ウニ軍艦」が姿を消しつつある理由 チリ産ウニをほぼ独占的に輸入している日本

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こうした生産量の不確実性のなか、在庫を確保したい日本の飲食チェーンや水産商社は、実際に必要以上の量を注文する傾向にあります。その傾向は、売り手にも買い手にも一種のバブル状態をつくり出し、チリ産ウニの価格が吊り上げられていくのです。

すでに回転寿司業界では、ウニは採算ぎりぎりのところにまで達しているはずです。大手チェーンではある時期までウニ軍艦が100円台で売られていましたが、現在は姿を消しつつあります。今の相場で私が試算したところ、1カン当たり200円以上の価格設定でも採算がとれない可能性があります。

ただ、今のところは、目玉商品となるウニの集客効果を加味し、メニューとして提供し続けているチェーンもあります。多くの大衆チェーン店で現在、軍艦ではなくウニが申し訳程度にのった手巻きや、「うに包み」といった状態で提供されているのも、こうした価格上昇が要因でしょう。2023年4月現在、ウニは昨年の高値により回転寿司の販売量が急激に減少し、新シーズンの価格交渉で大揉めしています。

しかし、この値上がり傾向が今後も続くと、そうは言っていられなくなります。市場原理に従えば、チリ産ウニをほぼ独占的に輸入している日本が買い控えると、そのうち値段が下がるはずです。ただし、実際のビジネスの世界はそう単純ではありません。「買い手は自分たちだけ」という日本の立場が、逆にしがらみとなるのです。

日本とチリは運命共同体

チリでのウニ輸出は1980年代から始まりましたが、その際から日本の水産業とチリのウニ業者は、お互いに唯一無二のパートナーとして、二人三脚のような形で品質を高めていったという経緯があります。

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しかし今、日本がチリ産ウニの輸入を半減させてしまったとしたら、日本に完全依存している現地のウニ業界は壊滅状態に陥ります。現在、冷凍チリ産ウニのうち、25〜35%は回転寿司チェーンで使用されています。彼らが買わなくなれば、現地のウニ業者はいくつも潰れてしまいます。そうすると、日本はウニの調達先を失ってしまいます。

そうした意味では日本とチリは運命共同体なのです。

今後、回転寿司業界がウニの仕入れ値上昇分に伴った値上げを行い、消費者がそれを受け入れることができれば、その関係は今後も続くでしょう。しかし、それができない場合、日本人はもう数百円という価格で気軽にウニを食べることはできなくなるのです。

小平 桃郎 水産アナリスト

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おだいら ももお / Momoo

1979年、東京都生まれ。東京・築地の鮮魚市場に務める父の姿を見て育つ。大学卒業後、テレビ局ADを経て語学留学のためアルゼンチンに渡り、現地のイカ釣り漁船の会社に採用され、日本の水産会社との交渉窓口を担当。‘05年に帰国し、輸入商社を経て大手水産会社に勤務。‘21年に退職し、水産貿易商社・タンゴネロを設立。水産アナリストとして週刊誌や経済メディア、テレビなどに寄稿・コメントなども行っている。著書に『回転寿司からサカナが消える日』。

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