回転寿司から「ウニ軍艦」が姿を消しつつある理由 チリ産ウニをほぼ独占的に輸入している日本

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財務省の貿易統計によると、冷凍チリ産ウニの2022年9月までの平均輸入価格は、キロ当たり約8610円。これは前年から約1.5倍、2016年からは約2.5倍にもなります。他の輸入水産物同様、ウニの継続的な値上がりには円安やエネルギー価格の上昇の影響もあります。しかし、ウニに特徴的なのは、他の魚種と比べて人件費高騰の影響を受けやすいということです。

海底に生息するウニは、ダイバーが潜って1つひとつ手で拾い集めます。水揚げされてからも、殻割りに身の洗浄と手作業が続きます。その後、盛りつけ工場に移動します。ウニは殻に汚れや菌が付着しているので、殻割りと盛りつけは必ず別の場所で行われます。盛りつけ工場ではまず、入念な異物チェックが行われます。ここでウニにトゲや殻が混入していると重大な事故につながるので、細心の注意が払われます。

その後、ミョウバン加工やブランチ(さっと茹でる)などといった、形崩れ防止のための工程を経て、トレーに盛りつけられて凍結され出荷を待ちます。ここまでで、可食部は殻付き重量の約6〜8%になってしまいます。

人件費率が高くなるウニ

出荷後は、最終消費者のもとに届けられる寸前まで、トレーの蓋が開けられることはありません。例えば回転寿司店でも、トレーのまま解凍すると、あとはシャリの上にのせるだけ。これは食中毒などの衛生問題や異物混入、品質異常があった際に、「誰のせいにもできない」ということ。

その分、ウニの加工には慎重さが求められ、結果的に人件費率が高くなるのです。チリの平均賃金は、現地通貨ベースで見ると2016年からの5年間で3割以上も上昇しています。この上昇分も価格に反映されているわけです。

加えて、生産量の見通しが非常に難しいことも、価格高騰に拍車をかけています。ウニは真水が当たると弱ってしまいます。風が強いと港も閉鎖されて搬入がストップし、工場が稼働できません。ウニは非常に荒天に弱いのです。

ウニを獲るダイバーも、同じ海域で獲れる海藻やカニなどの相場が上がった際には、それらの漁に行ってしまうので、ウニを獲る人がいなくなるという問題もあります。

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